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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL06050101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇蚊にはご用心を!

シンガポールでは昨年、デング熱が大きな流行を見せた。今年は今のところ950人で昨年の3割ほど、ここ5年間の平均に比べても8割程度である。一応平静であるといえるだろう。(とはいえ、昨年、徹底的な蚊の駆除をしたにもかかわらず、未だにこれだけの発生数があるのには驚かされる。)

ところでデングウイルスはネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介されるが、この蚊は同時にチクングンヤというデングに似た熱性疾患を引き起こすウイルスを媒介することで知られている。この病気の症状は発熱、頭痛、全身倦怠感、吐き気、嘔吐、発疹、筋肉痛、関節痛などである。関節の痛みは数週間も続くことがある。もともとチクングンヤとはスワヒリ語で“痛みのために歩けず、体を曲げる”といったような意味である。症状がデング熱と似ているため、誤診されることも多く、実際の罹患率はかなり高いと考えられている。

昨年から南西インド洋諸国で患者が多発(レユニオン島で20万人以上、ほかモーリシャス、セイシェルなどで数千人以上と報告されている)していたが、とうとう隣国マレーシアでもこの3月に7年ぶりに患者の発生があり、その中には、シンガポールと陸路(コーズウエイ、長さ1.2km)で繋がっているジョホールバルの病院で確認された例(4月2日)があった。

この疾患にはワクチンも特別な治療薬もないので、感染源を絶つことが重要となる。デング熱と同じように、人→蚊→人という感染様式であるため、ウイルスの蔓延を警戒し、シンガポールのNational Environment Agencyは既に国内の蚊が持つウイルスのチェックを始めている。

また、政府または非政府組織によるいわゆる“モスキートハンター”がすべての住宅、商業地で蚊が発生するような場所を徹底的に捜し除去する作業を4月17日から5月19日までの予定で行っている。これはデング熱を媒介する蚊の撲滅を意図したものであるが、同時にチクングンヤの対策にもなる。現在までチクングンヤの患者の発生はない。
デング熱と異なり、死に至ることはないとされているものの、警戒はしておきたい。

ちなみに、他に蚊によって媒介される病気としては、マラリア、日本脳炎、フィラリアなどが知られているが、マラリアは1982年から、日本脳炎は1992年からシンガポール国内での患者は発生していない。フィラリアは現在まで国内での発生はない。公衆衛生的努力が功を奏していると言えるだろう。
とにかく、蚊にはくれぐれも用心怠りなくということである。


◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇死を迎える場所

フィリピンの平均寿命は男性66歳(日本78歳)、女性72歳(日本85歳)で、日本と比較するとまだまだ低い数値ではありますが、これでも年々平均寿命が延びています。またフィリピンの死因は1位心疾患、2位脳血管障害、3位癌、それに次いで肺炎、事故、結核、分娩関連が原因の上位を占めています。

まず自由診療体制であるフィリピンでは、日本のような国民保険加入制度はなく、フィリピン国内の保険に加入していてもわずかに医療費をカバーするのみで、病院や専門医の選択などかなりの制約があります。また高度医療を要するような病気にかかった場合は保険だけでは十分な医療を受けることはできません。さらに癌など長期的な抗がん剤投与や入院治療、手術を要するとなれば、大変高額な医療費を負担しなければなりません。

生活習慣病の予防や、がんの早期発見、健康診断の実施の必要性はフィリピンでも一般向けに健康雑誌やテレビを通じ、啓蒙しているものの、これを実際実施できるのはごくわずかな裕福層のみで、病気が見つかれば国内有数の私立病院で治療をうけたり、最先端の治療をうけるために欧米諸国や日本に渡っていきます。

多くの人達は、病院とは疎遠のまま(健康診断などでは見慣れない血圧計で測定するだけで緊張して血圧が上がってしまう人もいます)、本当に病気が進行して自覚症状がでるまで、普通に生活をおくっています。その結果、生活習慣病の悪化による心筋梗塞や脳卒中の突然死、末期がんなど深刻な症状ではじめて発見されるケースが増え、突然仕事をやめざるをえない状況となることもめずらしくありません。

周囲でも運転中に若くして突然死した人、末期癌がみつかって、家族からの入院治療のすすめを押し切って、医療費が高く家族に迷惑かけるからと故郷へ帰っていった人などに遭遇しました。このように多くの人々は自宅での安らかな死を選ぶと考えられます。

そして、何よりも強調したいのが、最後に自分を見守ってくれたり、介護をしてくれる家族が多くいるということです。もし一人身であっても、近所に住む住人や親戚が必ずめんどうを見て助け合います。核家族化がすすむ先進国と大きく違う点であります。

予防医学、早期発見、早期治療に力を入れる先進国とはほど遠いのですが、先進国で入退院を繰り返し、治療をおこなう慢性疾患の患者さんに比べ、本当に最後を迎えるまで日常生活を陽気に精一杯過ごし、そして皆、家での死をごく当たり前に選び、故郷に帰って家族に見守られながら最後を迎える人々をみていると、本当は病に倒れた本人にとって何が最善の選択なのか考えさせられるものであります。

 

◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇この咳どうにかしてください、心配です!

2月、3月、4月と「持続する咳」、「喘息発作」を主訴とする患者さんが非常に多く来院されました。雨季と乾季の変わり目であるとか、卒業・進学・帰国・インドネシアへの派遣など社会環境の変化も関与しているのでしょうか。
(持続しない咳の場合には、JJC医療相談室には来ないのかもしれません)

「持続する咳」といってもいろいろな種類があります。
患者さんは「単に咳」と言っても実は気管支喘息発作であったり、消化器疾患や心臓病であったりもします。ジャカルタに来て喘息発作が少なくなったという患者さんもいますが、JJC医療相談室に来院する患者さんは「ジャカルタに来たら喘息発作が頻回に起こるようになった、増悪した」という方が多い印象です。 

これまで「持続する咳」の原因として「咳喘息」、「アトピー咳嗽」、「気管支喘息」、「かぜ症候群後遷延性咳嗽」、「肺結核」、「肺気腫」、「気胸」、「肺がん」、「胃食道逆流(胃液が食道へ逆流する刺激で咳がでる)」、「心臓病」などがありました。

特に多いのは「咳喘息」と「アトピー咳嗽」です。(気管支喘息発作、結核については以前に書きました。)
大雑把に言えば「咳喘息」の場合には気管支拡張剤が効きやすい、「アトピー咳嗽」の場合にはアトピー素因があったり抗ヒスタミン剤が効きやすい、などの特徴がありますが患者さんから話を聞いたり、聴診器で胸の音を聞いたりしただけでは鑑別はなかなか困難です。
アトピー咳嗽の場合は気管支喘息に移行することは無いとされていますが、咳喘息の30%は気管支喘息に移行するといわれています。

治療によっても「咳」が改善しない場合にはもう一度病状を確認し、呼吸器系であれば肺結核、肺がんなどの除外を再度行ってもらうことも必要です。レントゲンを撮ってみたら大きな腫瘍や、気胸(肺がつぶれる)の認められた患者さんもいました。心臓疾患や消化器疾患が原因の患者さんもおられました。

自己判断が危険な場合もあります。気圧や酸素分圧が低い飛行機に乗り病態が悪化して初めて重篤な病名が明らかになった例もありました。
ご心配なときは主治医に相談してください。

日本を離れて途上国で病気になるのは非常に不安なことです。日本を含め他院へセカンドオピニオンを求めることが必要なときもあるでしょう。そのような時はいつでもご相談ください。投薬された薬、検査所見、レントゲンフィルムなどと共に医療情報提供書(紹介状)をいつでもお書きしています。どうぞご遠慮なくご相談ください。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇“肝炎”について


数年前、大連において、A型肝炎患者が大量に発生しました(集団発生)。その後においても、散発的ではありますが、邦人の感染者を認めています。また、中国においては、全人口の約10%、約3%がB型肝炎、C型肝炎のキャリアー(無症候性ウィルス保有者)であるといわれています。中国国内において、これらの病気を発症した場合(いわゆる“急性ウィルス性肝炎”)には、“急性ウィルス性肝炎”が、SARS、トリインフルエンザ、AIDSなどと同じ“乙型伝染病”に指定されているため、一定期間、感染症専門病院での“隔離”の対象となります。

一般に“肝炎”という言葉は“肝臓の炎症”を意味し、その原因としては、各種ウィルスが原因となる “ウィルス性肝炎”が一般によく知られていますが(急性と慢性が有ります)、これ以外にもアルコールが原因となる“アルコール性肝炎”、各種薬剤が原因となる“薬剤性肝炎”、免疫の異常が原因で起きる“自己免疫性肝炎”などがあります。

“ウィルス性肝炎”は大きく分けると、A型、B型、C型に分類されます(それ以外にもD型、E型、G型、TT型などの他の肝炎ウィルスやEBウィルスやサイトメガロウィルスなどによるウィルス性肝炎も稀には有りますが、頻度は少ないです)。
A型肝炎は汚染された飲料水や食物(特に貝、海老、蟹など)を介して感染するのに対し、B型肝炎やC型肝炎は血液や体液を介して感染します。

ウィルス性肝炎の症状は一般に、発熱、疲労感、全身倦怠感や関節痛などで始まり、食欲不振、吐き気、嘔吐(場合によっては右肋骨下部の鈍痛)などに次いで、尿の色が濃くなり(“ビリルビン尿”といいます)、眼球の白い部分(いわゆる“白眼”)や皮膚が黄色になる“黄疸症状”が現れるのが特徴です(臨床症状のみから、肝炎のタイプ[A型、B型、C型など]を診断することは困難です)。

A型肝炎ウィルスは85℃で1分間加熱すれば感染力を失うので、熱が十分中まで通ってから食べるようにすれば、A型肝炎のみならず、他の下痢を起こす多くの病原体(ウィルス・細菌など)も殺すことが出来ます。A型肝炎が、貝、海老、蟹などを食べて感染することが多い理由として、これらの生物が“ウィルスに汚染された海水を1日に約20リットル近く体内に吸い込み、吐き出す過程で、海中にある病原体を体内に蓄積する性質がある”ためであると考えられています。

B型肝炎・C型肝炎は、これらのウィルスを持っている患者(急性肝炎)あるいはウィルス保有者(キャリアー)の血液や体液(精液・リンパ液など)から感染しますが、飲食物から感染することはありません。先進国でも、かつては、肝炎の検査がされていない血液、血液製剤、臓器などの提供を受けて感染した例が多くありましたが、その後、的確なウィルス検査法(ウィルスの核酸[DNA、RNA]増幅検査など)が開発された結果、輸血後肝炎は激減しました。

しかし、中国の農村の一部地域においては“献血”以外に (建て前上は禁止されているはずの)“売血”が依然として行われており、十分な血液検査を行わずに輸血を行っている施設もあります。最近では、消毒されていない器具を使用することによって、麻薬常用者の間で、あるいは刺青を入れる際に感染することがあるようです。 

B型肝炎ウィルスを他人に感染させる可能性のあるキャリアーの比率は、欧米諸国では全人口の約1%以下(0.1-0.5%)、日本では約2%であり、東欧や中東、ロシアでは2-7%となっています。中国では約1割と比較的高い率となっています(このB型肝炎ウィルスは煮沸(100℃)では殺すことが出来ず120℃で30分間加熱する必要があります)。

他の肝炎(A型、C型)と比べて、B型肝炎ウィルスの血液検査には多くの検査項目がありますが、最も一般的に行われる(外国人の就労ビザ取得時、就職・入学時など)のはHBs抗原(HBs-Ag)とHBs抗体(HBs-Ab)です。これらの検査結果の判定は、簡単に述べると以下の通りですが、“急性肝炎の発症”と“キャリアー(ウィルス保有者)の急性増悪”の区別は、実際には難しい場合もありますし、HBs抗体の抗体価が低すぎる場合には過去に予防接種を済ませていても、追加予防接種が必要になる場合もありますので、詳しくは医師と御相談下さい。

HBs抗原(HBs-Ag) HBs抗体(HBs-Ab) 判定
陽性(+)陽性(+)ウイルス保有者、再検査要
(医師に相談要)
陰性(-) 陽性(+)B型肝炎の免疫あり
(予防接種不要)
陰性(-)陰性(-) B型肝炎の免疫なし
(予防接種必要)