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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL06030101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇シンガポールの若年者の自殺

現在のシンガポールの自殺率は人口10万人あたり10人程度と世界で50番めぐらいであり決して高くはない。(ちなみに日本は24人で世界10位)。ところが、高齢者に限ってみると自殺率がかなり高い時期もあったようだ。1995年のシンガポールの高齢者の自殺率は人口10万人あたり42.4人で、これは当時、世界2位の高率であった。それが現在では20人程度にまで減少している。カウンセリングなどが受けられる施設(例えばSamaritans of Singapore (SOS)など)を充実させる努力をしたことやシンガポールの順調な経済成長等が改善の理由であるらしい。

このように年長者の自殺率はかなり減少したのだが、反面、若者の自殺率は減少していない。10代の人口10万人あたりの自殺者は3.5人程度と10年前よりむしろわずかに増加している。(日本は4.5人程度)。自殺者のうち20才以下はおよそ5%を占める(日本は2%程度、中高年の自殺が多いため)。20才以下では女性の比率も高まっている(過去5年を総計するとほぼ男女同数)。

また、若者の自殺の理由の第1位は対人関係の悩みで56%、2位は学業に関することで25%、金銭が理由となっている場合も9%ある。実際にはいくつかの理由が複合している例が多いようである。日本の場合は理由が明らかなもののうち、1/3が健康問題、学校関係が1/5ほどとなっている。

シンガポールの若年自殺者は以前に比べて遺書を残す例が多くなった。ほぼ半数の者が何らかの遺書を残したが、これは30年前の2倍である。他の人の理解を得たい、自身の行動の正当化などが遺書を残す理由であるとされている。感情的な遺書が多いことも若年者の特徴である。時代を反映して、携帯メールを使った遺書がここ5年で2倍以上に増加した。

厳しい教育制度と少子化で兄弟が少なくなったことなどが学業や対人関係などに影響しているのだろうか。

また、付け加えておきたいのは外国人労働者が自殺のハイリスクグループであるということである。彼等は必ずしも20才以下ではないが、多くが若年である。過去5年間で自殺した外国人労働者のうち、39%がメイドであった。また、建設作業現場などの労働者も29%を占めた。重労働に加え、待遇が悪いこと、また、言葉が通じないことが更に状況を悪化させる要因として考えられている。

当院でも、心理面の訴えで受診されるケースが毎年、増加しており、看過しがたい事実であると思われる。


◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇1年間の受診率

マニラ日本人会診療所に着任し、はや1年が経過しました。今回はこの1年間の在留邦人の疾病傾向について報告します。

下の表は過去1年間にマニラ日本人会診療所を受診した方(初診のみ。小児を含む)の疾病別の比率です。

まず急性呼吸器疾患と急性胃腸炎(下痢)が圧倒的に多く約半数を占めています。かぜ症状の中には大気汚染や空調等の影響か、咽頭痛、時に中耳炎を合併した成人の受診が1年を通じて多かったです。

虫刺されや蟻に咬まれた症例や傷口が化膿したりダニによる皮膚炎等の皮膚疾患も目立ちました。

フィリピンでも近年生活習慣病の増加や小児の肥満が指摘されている中、邦人も赴任後の食生活の変化や運動量の低下、赴任後の体重増加などが影響し生活習慣病が悪化し受診するケースも目立ちました。

不眠や頭痛、軽度抑うつ状態で受診される方も少なくありませんでした。

この1年で延べ6330人が受診、月あたり平均すると約530名が受診されています。マニラ首都圏からの受診がほとんどで、遠方や離島からの受診者はごく僅かでした。また当診療所は産婦人科外来、小児科外来があり、小児の受診者は全体の約13%を占めています。また月あたり2~3名の方が出産しています。


2005年3月~2006年2月疾患別受診率(%)


呼吸器・胃腸炎以外の感染症に関しては1年間で腸チフス4名、デング熱12名、アメーバ赤痢73名(雨季にピーク)、性感染症54名、急性肝炎10名でした。

フィリピンは結核の有病率が大変高く、結核の疑いで受診される方も月あたり数名いらっしゃいますが精密検査の結果ほとんどの方が非結核性の疾患で症状は改善されています。

特別移送機を使っての搬送例・死亡例はありませんでしたが、虫垂炎や胆石、脳出血など緊急手術を要する場合以外の手術適応例では、多くの方が日本での手術や精密検査を希望し帰国されています。

1年を振り返るとあっという間でしたが、徐々にフィリピンの医療事情がわかり各専門医との連携もとれるようになって参りました。今後も医療情報の提供や医療相談、適切な専門医への紹介、日本の病院との連携等で少しでも役にたてればと思っております。
 

◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇ショックです! 心肺蘇生も必要です!

期待していたことが裏切られて「わー、ショック」というのとは違います。

この2ヶ月間の間に薬剤性アナフィラキシーショック(生命に関わる重篤なアレルギー反応の一種)の患者さん3名を対応させていただきましたので、今後のジャカルタでの皆さんの受診の際に参考になればと思い紹介します。(個人の詳細は除かせていただきます)
患者さん3名とも青壮年です。

一般に医学的な“ショック”とは「心臓、脳、腎臓など生命維持に重要な臓器の機能を維持するのに十分な血液が得られなくなった状態」を言います。放置すれば種々の臓器障害から死亡に至ることもあります。

ショックが起こる原因には多くのものがあります。例えば、大量の出血、広範囲の熱傷、心筋梗塞や重症弁膜症、そして重篤なアレルギー反応などです。

アナフィラキシーショックとは極めて短時間(多くは数分~60分以内)に起きる重篤なアレルギー反応によるショックです。
アナフィラキシーショックの症状としては、気管支喘息様症状(呼吸困難)、意識レベル低下、意識消失、重篤な不整脈などの心症状、急激な血圧低下、心停止などが起こり得ます。
薬剤投与(内服や注射)から発症までの時間が短いほど重篤になる可能性が高いといわれています。

当相談室を受診したときに今回の患者さんは3名とも意識はありましたが、意識朦朧(呼びかけにようやく答えられるくらい)でした。血圧は血圧計では測定できないほどに低下していました。

内服した薬や既往についての質問にも当然本人は答えられる状態ではありません。ご家族・友人も動揺されていて「銀色の袋に入った丸い薬でした」、「ピンクの粉薬でした」、「カプセルでした」などなど、これでは全く内服した薬の推測も不可能です。出来れば受診時に“薬そのもの”、または“薬の包み紙”を持参していただくこともその後の治療に大切です。

幸い、今回の患者さんたちはお元気になり、現在は通常の生活をされています。

今回の3名のうち2名は自分の病名や内服している薬が何なのかの説明も受けていませんでした。
医師側にも問題はありますが患者さんも自分の身は自分で守るようにせねばなりません。


医師から薬を処方された場合、特に薬剤・食物にアレルギーの既往のある方は是非以下のことを確認し説明を受けてください。

1)何のための薬か
2)薬の名前は何か
3)自分の病気・症状になぜ必要なのか
4)内服は自己判断で中断・再開してもよいのか
5)副作用が心配であればそのときの適切な対応はどうすべきか
6)必ず自分にアレルギーの既往があることを述べる(医師が聞かなくとも)
など。

今回の患者さんたちは幸いにもアナフィラキシーショックが起こったのが昼間で、ショック後直ちに連絡をいただき早急な対応ができました。患者さん3名とも側にご家族や会社の人がいてくれて早期の対応をしてくれました。

自宅で深夜、周囲に人がいないときにアナフィラキシーショックが起こった場合には病院へ到着する前に死亡してしまう可能性もあります。病院に行く前に呼吸停止や心停止する可能性もあります。
―――――>このような状況に出会ったら周囲の人は直ちに心肺蘇生をしなければなりません。

ジャカルタの医療事情を考えると「自分の身は自分で守る」という姿勢が大切です。医師任せではいけません(日本でも同じです)。

(追記)
上記のようなケースは二度と起こってほしくありません。
万が一、心肺停止のときには「心肺蘇生法」が必要になります。
去る2006年2月24日、昨年に続いて日本赤十字社による第2回「救急蘇生法の実習」(インドネシア赤十字社、日本大使館、ジャカルタ・ジャパンクラブ後援)が行われました。参加者はたったの20人弱でした。人形を使って実際に心肺蘇生法の実習をしました。
皆様もこのような機会を是非とも利用して、万一のときに備えておくことも大切です。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇漢方薬について

現在、中国においては“西洋医学”と“東洋医学”の両方が存在し、それに伴い、“西洋医”といわゆる“中医”の2種類の医師、“西洋薬”と“漢方薬(中薬)”の2種類の薬剤が存在しています。漢方薬が、特に有効であると考えられるのは、“原因が十分に解明されていない病気”や、“慢性の病気で、満足のいく治療法が見出せない病気”などです。

西洋薬以外の一つの治療手段として、今後、東洋医学が重要な役割を担う可能性が期待されています。更に最近では、“本来、交じり合うことの少なかった両者の医学が、互いに足りない部分を補完し合う治療”が注目されてきています。

近年、世界的規模での“自然回帰の流れ”に伴い、中医・漢方薬の国際化が進み、ますます多くの人々が天然の植物成分を中心とした漢方薬の治療を受けるようになりました。現在、漢方薬は130もの国と地域に向けて輸出されているそうです。

次に、西洋薬と漢方薬の違いについて述べたいと思います。西洋薬の特徴は、特定の効果を有する“作用点(どこに作用するか)”ならびに“作用(どのようにして効果を表すか)”が明確な物質であるといえます。それに対して、漢方薬はより広く、“病める体に好ましい作用を有する天然物(植物・動物など)由来の物質”であるといえます。

西洋薬は一般に効果が強力であり、短期間の服用で、“目に見える効果”が期待出来ます。しかし、中期・長期投与では、“不都合な結果”を生む可能性もあります。
一方、漢方薬の場合には、作用点が不明確であるが、その作用が全身にまで及ぶ結果、短期間で強力な効果を示さなくても、“長期的な効果”を生むことが期待されます。
漢方薬は種々の成分を含有し、一つ一つの成分(単方)は弱い効果しか示さなくても、薬剤全体として相加・相乗効果を示すと考えられます(複方)。また、他の薬の副作用を軽減する物質や、服用しやすくするための物質など、直接生体に薬理効果を示さない物質も薬と考える点が、西洋薬と異なります。

西洋治療は、“多数の症例、個体を調べ、その大多数に見られる平均的な反応”を“薬物の作用”としています。
一方、漢方治療の基本的な考え方は、“同じ薬物でも、個体間により、あるいは同じ個体においても年齢、環境、疾病の種類や状態によって、反応性が異なる”という立場をとっています。
これを身近な例で説明します。例えば、“アルコール”や“カフェイン”などの単純な物質ですら、“各個人あるいはその摂取量により全く逆の作用を示す”ことがあることを考えると漢方治療の考え方を理解しやすいかと思います。 

さらに漢方治療では“病名”で治療法を選択するのではなく、患者の示す“病態”を一つの“症候群”として捉え、その“症候群”に対して適切な治療をした場合のみ、高い治療効果が得られます。漢方ではこれを“証”といい、これに基づく治療を“随証治療”といいます。また、“証”は固定したものではなく、病期、病態あるいは治療により変化するものです(“証”についての詳細は省略させて頂きます)。

1996年からわが国でも、医療用漢方エキス製剤の市販後薬効・効能に関しての再評価試験が始まりました。
これにより、小柴胡湯、小清竜湯、大黄甘草湯、釣藤散の4薬剤に関して多施設二重盲検比較臨床試験(薬効評価の方法の一つ)が行われ、4薬剤ともにプラセボ群(比較対象群)と比べて有意な臨床効果があることが証明されました。
つまり西洋医学的観点からも有用性が示されたのです(これを西洋医学ではevidence-based medicine(EBM)と呼びます。

また、漢方薬は“作用も弱いが副作用も少ない”と一般に考えられがちですが、ベルギーのある痩身クリニックが“広防己”を“防己”と誤用して、複数の患者で、重篤な腎機能障害を引き起こしました(血液透析、腎移植が必要なケースが多数出ました)。日本でも、ある減肥薬(やせ薬)を服用した女性が死亡し、漢方薬服用との因果関係が疑われたことなどが記憶に新しいところです。
漢方薬の場合には、“名称が近似しているが作用が全く異なるもの”、“民間に伝わる証を考慮しない経験的な処方―いわゆる秘伝の処方”が有り、注意が必要です。

漢方薬による副作用について調査した研究によると、過量の服薬、長期の服用、煎じ方・煮方の誤り以外に、個体差(年齢、男女、肝機能・腎機能、アレルギーの有無など)、あるいは併用薬との薬物間相互作用などにより副作用が出やすくなるようです。特に漢方の注射剤(日本ではまずお目にかかることは有りませんが…)は内服薬と比べて副作用の頻度が高いことが知られており、注意が必要です。

これらの理由から、漢方薬は基本的に中医に配合・処方してもらい(随証治療)、用量用法などをきちんと守って服用することが大切です。また、同時に、(西洋薬と比較すると、はるかに少ないですが)漢方薬でも副作用が出ることがあるということを念頭に置く必要があると思われます。さらに、漢方薬の一部には“偽薬品”や“粗悪薬品”が市場に参入しているという指摘もあり、品質管理の徹底が望まれるところです。

西洋医学と東洋医学が目指すところは、ともに“病気”の治療ですが、いかなる治療法でも各々“適応”と“限界”が有ります。今後、両医学を統合することにより、治療可能な範囲を広げることが可能になるかもしれません。