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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL05120101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇インフルエンザ

シンガポールでは人が鳥インフルエンザに罹患したという報告は現在まで一例もなく、また、野鳥の死骸からH5N1型のインフルエンザウイルスが見つかったという報告もありません。

鳥インフルエンザがこのまま鳥型であれば、人から人へ流行することはないわけですが、遺伝子変化がおきて、近い将来、新型のヒトインフルエンザが出現し、大流行することが危惧されています。

ヒト型になった時、どのくらいの致死率を持っているかについては様々な予想が立てられているようです。世界人口の25%(15億人)が病気にかかり、その10%である1億5千万人が死ぬというものから、0.5%の740万人ぐらいであろうとするものもあります。シンガポールのMinistry of Healthはシンガポールでは人口の約11%にあたる45万人が罹患し、11000人に入院治療が必要となり、罹患者の約0.4%の1900人が死亡するという、予測を発表しています。

治療薬のタミフルは製造過程の困難さと原材料の不足から生産量には自ずと限界があります。製造元のロシュ社は生産量を来年さらに10倍に増やし2007年まで年3億人分生産すると発表しましたが、計画通りに行っても累計で世界人口の約10%分ですし、通常のインフルエンザの治療にも多くが消費されますからこれが全て新型インフルエンザ用に備蓄できるわけではありません。薬が充足することは難しいように思われます。

シンガポール政府はタミフルを既に43万人分備蓄し、さらに備蓄量を増やしています。流行の程度が予想通りなら、罹患者全員を治療できる量を既に持っていることになりますがこの予想はかなり楽観的であり、シンガポールのような人口稠密地域ではむしろもっと患者数が多くなるのではないかという予測もたてられますので油断は禁物です。

個人や会社などで、タミフルを備蓄したいというご希望が多いのですが、シンガポールでは必要ありませんし、むしろ、診断がないまま、貴重なタミフルが必要のない方に服用されたりすることが考えられますし、副作用の管理ができなかったりする恐れがあります。病院などにあれば、確実に治療が必要な方に薬が渡りますが、一般の方が持った場合、薬の供給量には限度がありますから今治療が必要な方に薬がいきわたらなくなる恐れがあります。少なくともシンガポールでは薬の備蓄は政府と病院に任せたほうが安心です。薬は今、治療が必要な方に飲んでいただき、感染を広めないことにご協力ください。

また、既に、タミフルの効かないウイルス株も出始めています。(薬を使えば使うほどこうした耐性ウイルスが出てくるものです。この意味でも必要な方だけにお飲みいただきたいのです。)新型のインフルエンザウイルスに対するワクチンができるのは、流行が始まってから少なくとも半年はかかるといわれています。つまり直接的な有効な治療手段がない場合も起きうることを想定しなくてはなりません。インフルエンザの潜伏期は1-4日ぐらいです。インフルエンザは明らかな症状が出始める前に既に、感染力を持ち始めるという困った特徴がありますが、だからといって、何も対策しないわけにはいきません。

最低限、市民レベルでできることをいたしましょう。私たち個人や会社でできる感染予防は、至極当然と思われますが、普段から、体力の維持につとめることです。うがいや石鹸を使って手洗いを十分にすることも大切です。

感染を広めないためには、もし、(新型)インフルエンザにかかったらしいと思われたら、人の多いところに行ってはいけません。バスや公共交通機関も避け、必ずマスクをしましょう。咳やくしゃみの中には多くのウイルスが含まれているため、そうした処置をすることで、ウイルスの拡散の確率が下がります。ドアのノブもなるべく触らないようにしましょう。医療施設にもマスクをしておいでください。そうしませんと病院は病気を治す場ではなく、病気を広める場となってしまいます。どうか、ご協力ください。

また、具合が悪いのに無理をして、学校や会社に行くことは考え物です。<こんな熱ぐらいで休めるか>とあなたは思うかもしれません。しかし、会社員の方、会社の上司の方、どうか、少しだけ長い目で見てください。その日に無理をすることは決して得にはならないはずです。相手は新型インフルエンザです。世界中の誰も抗体を持っていないのです。その方が、学校や会社へ行けば、あっという間に病気は広まってしまいます。そして、結果的に多くの犠牲者が出ることになるのです。 

さて、いろいろ不安になるようなことを書いてしまいましたが、ここで、世界を席巻したスペイン風邪が流行った大正6-7年の医療事情を考えてみましょう。この頃はウイルスという病原体もわからず、有効な解熱薬もなく、高熱による脱水の治療のための点滴もできず、また、続発する細菌性肺炎に対する抗生物質もなく、国民の栄養も不良だったはずです。そんな時代に日本では全人口の42%がスペイン風邪にかかりました。しかし、98.4%の人は生還しました。確かに、多くの犠牲者は出ましたが、そんな時代でも生還した人のほうが圧倒的に多かったのです。

皆で協力してこの難局を乗り切りましょう。


◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇世界有数の低自殺率

半年ほど前になりますが、フィリピン・マニラでWHO(世界保健機関)西太平洋地域事務局主催による自殺予防会議が開催されました。年間の自殺者が3万人を超え世界でもワースト10に入るとされる日本に比べ、フィリピンにおける自殺率は会議参加国の中では最下位という報告でした。10万人あたりの自殺者が日本では25.5に対しフィリピンは2.1で10分の1にも満たず世界でもかなり低率の国に入るということです。一般的に自殺者の中には精神疾患をかかえている人が多いとされ、なかでもうつ病による自殺者は高率であるといわれています。

うつ病の診断は1日中気分が沈んでいたり、1日中ほとんどの活動や趣味に対する興味がなくなったりすることに加え、疲れやすい、集中力や判断力の低下、無気力感、おっくう感、不眠、食欲低下等がほぼ2週間以上毎日続く場合をいいます。これが職場や家庭など日常生活に大きな支障をきたしたり、時にふと死にたくなる気持ちが加わると医療的な介入が必要になる場合が多くなります。また最近は早期発見による早期治療が有効であることが明らかとなり軽い症状でも治療や地域サポートを早めに始めたほうがいいとされています。

フィリピンの自殺率の低さは世界有数であることから、当然のことながら自殺の原因で多いうつ病の有病率も低いと推測されます。同じ職場で働く比人医療スタッフらとの会話からでも一般的にフィリピン人は“誰でもかかり得るうつ病”という概念はほとんどないということがわかります。ではなぜフィリピン人はうつ病になりにくく自殺率も低いのかという理由をこの10ヶ月の滞在でフィリピン人と接してきた印象も含め述べたいと思います。

まずフィリピンではカトリック教徒が国民の8割を占めるため宗教観の違いは大きいと思われます。またスペイン支配下であった影響の残るフィリピンではラテン気質の人が多く、印象としては皆とても明るくフレンドリーであり、仕事中でも時に大きな声で歌うこともありいつも心の底から楽しそうに笑います。

食べることはとても好きで家族や自分の誕生日といっては食事やお菓子を持ち寄り昼食時は皆でテーブルを囲み楽しそうにおしゃべりをしながら食べます。

そして家族の結束がとても強く、遠い親戚であっても若者が島からマニラに働きにやって来ると長い期間面倒をみたりすることもよくあるようです。老人や子供の世話は家族や親戚、近所の人たちで助け合っています。核家族化し老人ホームに入所するケースも多い日本のしくみは説明してもなかなか理解されません。

つまりうつ病でよく認める“孤独感”をつくりにくい環境といえます。また家も密集して建っている町が多いので嫌なことが家庭や仕事内であっても“誰にも言えない”という状況はつくることが難しく大抵すぐに近所や周囲が自然に知ることになります。つまり重大な出来事や困難な状況を“隠す”ことができない国柄であるため自然に周囲が相談にのるといういわゆるソーシャルサポート体制が自動的に構築されるわけです。

ショックな出来事や重大な問題が起きても、長く引きずることはめったになく、翌日にはすっきりした明るい表情で好きな歌を口ずさみ笑顔で出勤してきます。うつ病の診断について上述したように2週間以上毎日抑うつ症状が続くことはまずありません。

そして良くも悪くも、皆仕事や生活を無理してがんばることはしません。つまり自分で無理だと思ったらすぐに休養をとります。休養がうつ病治療のなかで大変重要な部分を占めることを考えるとフィリピン人の多くは早めに自分の疲れに気づき(早期発見)休養をとることにより(早期治療)うつ病や自殺の自己防衛法が身についているともいえるのではないでしょうか。

日本人の場合うつ病をできるだけ周囲に知られないようにして、人に迷惑がかかるからと限界を超えるまで仕事や生活をがんばったり、代わりにやる人がいないという理由から休養がとれず、相談したくてもする人が近くにいない状況で症状が増悪してしまうケースが多いのに比べ、フィリピン人の気質はまったく正反対になります。つまりフィリピンでは抑うつ症状を“長引かせない”文化が自然に根付いているといえます。

両国を比較することは決して簡単なことではありませんが、うつ病や自殺率の高い我々日本人にとっては時にふとヒントになることや見習ってもいい面も、もしかしたらあるのかもしれません。
 

◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇いつから学校へ行ってもいいですか?

今回はよくいただく質問の中から、
「学校へいつから行ってもいいの?」
について考えてみましょう。

日本ではインフルエンザが流行する季節になりました。
インドネシアのみでなく世界中で鳥インフルエンザ・新型インフルエンザのパンデミックが危惧されています。

日本ではインフルエンザに罹ってしまったら発熱時は出席停止。さらに解熱した後2日間は学校への出席停止期間として学校保健法により規定されています。患者さんご自身の健康を守るためと、他の人への感染を予防するためです。

感染症に罹患したとき、通学時期に関する質問を多くいただきます。
インフルエンザ以外の他の感染症に罹患したときはどのように対応していけばよいでしょうか。
以下は日本で行われている指針ですので参考にしていただければと思います。

疾患―出席停止期間
――――――――――――――――――――――――――
インフルエンザ―解熱した後2日を経過するまで
麻疹(はしか)―解熱した後3日を経過するまで
流行性耳下腺炎(おたふく)―耳下腺の腫脹が消失するまで
風疹―発疹が消失するまで
水痘(みずぼうそう)―全ての発疹が痂皮化(かさぶた)するまで


以下の疾患は病状により学校医や他の医師が伝染の恐れがないと考えるまでは出席停止とします。

溶連菌感染症―治療開始後1日は感染性がある。適切な治療が行われ1日を経過し、全身症状がよければ登校可能。

手足口病―咽頭は発病後1~2週間、便は発病後3~5週間感染性が持続するが出席を停止する積極的な理由はない。

ヘルパンギーナ―手足口病と同じ

マイコプラズマ感染症―無治療では数週間感染性がある。症状がなくなれば感染性は少なくなる。

ロタウイルス下痢症―発症後10日間は便中にウイルスが検出される。症状が改善すれば登校は可能。

伝染性膿化疹(とびひ)―無治療では痂皮にも感染性があるが、出席停止の必要はない。

学校の勉強も大切でしょうが、健康維持も大切です。
お体を大切にしてください。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇突然死について

ある大手保険会社が2004年度に扱った大連市内で発生した“突然死”は4例だったそうです(参考までに“事故や自殺による死亡”は7例だったそうです)。領事館に登録されている常駐する日本人の数が4千人弱(実際には、出張ベースの方、留学生などで、領事館に登録がなされていない日本人を合わせると5千人から8千人前後と推測されます)で あることを考えると、決して少ない数字ではないと思われます。

突然死のほとんどは、心臓に原因がある“(心臓)突然死”であると言われています。そこで、今回は 突然死の中でも、特に“(心臓)突然死”について述べたいと思います。

突然死とは
“突然死”とは、それまで通常の日常生活を営んでいた者が、数時間以内の経過(1時間以内が多い)で死亡する病態を指します。(基本的には全年齢層に起こりうるのですが)好発年齢は一般に、生後6カ月までの乳幼児ならびに45歳から75歳までの年齢層であることがわかっています。“突然死”の原因のほとんどが、心臓に原因がある“(心臓)突然死”です。そして、“(心臓)突然死”の原因の7-8割は“心室細動”という致死性の不整脈によるといわれています。

突然死の危険因子として
①もともと心臓疾患を持っている場合
②男性であること
③心臓肥大があること
④肥満があること
⑤喫煙者であること
⑥糖尿病などの耐糖能異常(空腹時ならびに食後血糖が高いこと)があること
⑦高血圧があること
⑧社会的に孤立していること
⑨ストレスが多いこと
⑩過度のアルコール摂取があること
などが挙げられます。

突然死が起きやすい時間帯は
一般に午前6時から12時までに起こることが多いといわれています。この理由としては、この時間帯は
①“血小板機能(血液を凝固させる機能)が亢進しやすいこと”
②自律神経の状態(交感神経と副交感神経のバランスが“交感神経優位”に傾く)から “冠動脈(心臓を養っている血管)が比較的、収縮しやすい状態にあること”などが挙げられます。

基礎疾患としては
心肥大、心筋症(心臓の筋肉の病気で、“拡張型心筋症”や“肥大型心筋症”などが知られています)、心臓弁膜症、冠動脈奇形、川崎病などの他、心筋炎を中心とした各種  炎症性疾患、各種心電図異常、抗不整脈薬服用者、低カリウム血症などの各種電解質異常、3環系抗うつ薬服用状態などが挙げられます。剖検例(死亡後に病理解剖を行い得た症例)による検討によると、およそ3分の2の症例で3本ある冠動脈のすべてに“75%以上の狭窄”が見つかり、同様の割合で “陳旧性心筋梗塞”が見つかったとする報告があります。 

原因としては
① 動脈硬化巣にある“不安定プラーク(粥腫)”が破綻することにより形成された微小血栓(血液の小塊)が突然、3本ある冠動脈のうちのどこかに詰まることにより、心筋梗塞(心臓の筋肉が壊死すること)を起こし、これが引き金となり“心収縮不全”(心臓のポンプ機能が失われること)、“致死性の不整脈(心室細動など)”が起きること
② 冠動脈の“れん縮”(血管が収縮すること)が引き金となり同様の現象が起きること  などが想定されています。
このうち、“不安定プラーク(粥腫)”が破綻し、冠動脈が詰まり “致死性の不整脈”が引き起こされた場合には一般に、死亡率が高く、予後が悪いことが知られています。

治療ならびに予後については
無治療の心室細動は、一般的には、意識消失後、3分から5分以内に不可逆的な脳の障害を引き起こし、その後、死亡という経過をとります。また、心停止から“除細動(電気ショック)”までの時間が1分を経過する毎に7―10%ずつ救命率が下がるといわれています。

従って、脈を触診して、“心停止”が確認された場合にはすみやかに“気道を確保”し、“人工呼吸”や“心臓マッサージ”などのいわゆる“心肺蘇生”を施す必要があります(“心肺蘇生”については“救命救急士”を含めた医療関係者に任せた方が安全かと思われます。ちなみに中国では“救命救急士”という資格は、現時点ではありません)。この間にどれくらいの時間を要するかが“生死を分ける要”となり、“心停止による脳障害の程度を決める”といっても過言ではありません。

最近では自動体外除細動器(AED: automated external defibrillator)が少しずつ普及してきています。AEDは電極を胸部に貼り付けてボタンを押すだけで除細動(電気ショック)を安全に行うことが出来ます。心電図の解析ならびに診断を自動的に行ってくれるタイプが普及してきています(この場合には除細動が“不必要な場合”にはボタンを押しても機器は作動しません)。

予防については
突然死の危険因子を複数、持っている場合には、その数を軽減するように努めることが大切です。危険因子を持っていない場合には、あらたに危険因子を、持たないようにすることと、定期的に(最低でも1年に1回は)健康診断を受ける必要があります。

心停止後の救命率を向上させるためには、体育館、運動場、空港などの公共施設やホテル・イベント会場・スポーツ施設など“多数の人が集まる可能性がある場所”にAEDを配備する、医療関係者ならびに一般の方向けに“講習会”を実施するなどの、“行政ならびに医療サイドの取り組みも必要と考えられています。

最近の裁判判決で、“AEDを設置していなかった施設が、突然死した方の家族に訴えられて敗訴した例があります。また、一般の方がAEDを(善意で)使用したが、結果的にその方が亡くなってしまい、その後、遺族側に訴えられた例もあるそうです。

せっかくAEDが普及しても、そのような事態が起きることを恐れてAEDの使用を心理的に妨げ、結果的に“救えるはずの命が救われない”ことも懸念されます。したがって、“AEDを使用して、患者様が死亡した場合には、法的な責任を問われることがないようにする”などの“AEDを使用する側”が法的に保護されるような“法律の整備”も今後、必要とされています。