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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL05090101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇デング熱患者、更に増加

またデング熱の話かとの批判を受けるかとは思いますが、今、シンガポールではデング熱患者がますます急増しています。

8月半ば一週間で414人の患者さんの発生があり、史上最悪の数字となりました。
その2週後記録は更新され一週間で493人、8月末までの患者数は8308人でした。(ちなみに昨年度同時期は4395人でした。)
その後、流行は更に勢いを増し、記録は再び更新され9月の第一週には546人、9月8日は一日で114人の患者数となり、この週は4日連続で100人を越えました。
週当たりの患者発生数はさらに更新されそうです。死亡者は8人となっています。

デング熱に関しては特異的な治療薬もワクチンもまだ無いため、蚊にさされないようにすること、蚊の発生源を絶つことが重要です。

シンガポールには50種類以上の蚊がいますがその中でデングウイルスを媒介するのはAedes Aegypti, Aedes Albopictusの2種類です。
これらの蚊はきれいな水溜りを好みますが、排水溝や泥水でも生息し増えます。
産卵にはほんの少量の水で十分で、コインの大きさでフィルムほどの深さの水があれば卵を産み付けてしまいます。
摂氏30度の環境では一週間で成虫になってしまいます。飛翔能力は高く、行動半径は水平距離740m以上、垂直距離では少なくとも21階建ての建物の高さには達することができるようです。(これは、エレベーターが動かない無人の公団住宅の21階で観察されたことがあることが根拠となっています。)

デング熱の流行は新聞紙上を賑わせ、連日のように報道があります。集団発生した地域も新聞やインターネットで発表になります。島の東側の地域に多いようです。

National Environment Agencyの発表では4つあるデングウイルスのうち今回はstrain3が主流であり、昨年はstrain1、2003年はstrain2であり、血清型が異なっているので昨年や一昨年にデング熱に罹患した人もかかる可能性があるとのことです。
もちろん同じ型のデングウイルスには免疫ができますが、別の型には免疫はできません。むしろ、デングは2回目にかかると1回目よりも症状がひどくなる傾向があります。
これは1回目の感染でできた抗体がウイルスと結びつくのですが、型が合っていないので中和することもできず、ただ体内への侵入を容易にしてしまうからだと考えられています。

デング熱に罹患したことのある母親から生まれた子は生後1年は、母親からの受動免疫があるため、既にデング熱に一度かかっているのと同じことになり、初めてかかっても2度目であるかのような強い症状が出ることがあるので注意が必要とのことです。
ただ、3回かかることは極めてまれです。3回目に関してはそれまでの2回の感染でできた2種の抗体がウイルスの進入に対し、共同して防御的に働くからだと考えられています。

シンガポールのMINISTRY OF HEALTH(日本の厚生省にあたる)は疑い例であってもすぐに報告をするようにという異例の通達を9月6日付けで出しました。
というのは、デング熱の確定診断である抗体の検査が陽性になるには熱が出てから4,5日目であるので、そうした患者さんを放置すると、その間、その患者さんはデングウイルスを体内で培養してしまうことになります。
その方が蚊にさされると、またデングウイルスを持った蚊が増えてしまうということになってしまうからというのがその理由です。

シンガポールの首相は憂慮すべき事態とし、政府の側からだけの対応ではとても間に合わず、全国民の意識の向上と協力が必要だとし、例えば、蚊の発生源となるようなところがあったらすぐに、報告するよう国民に呼びかけています。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇飲料水について

フィリピンは6月頃から雨季に入り9月は降水量が年間で最も多い時期です。雨季に伴い当診療所では8月に入ってから激しい腹痛をともなった下痢の症状でアメーバ赤痢と診断される邦人が急増しました。
アメーバ赤痢は汚染された食物や水道水に混入したと思われる赤痢アメーバ原虫が口に入ることによる経口感染です。
便を直接顕微鏡で検査することにより比較的簡単に診断がつきます。
また一週間ほど薬を飲むことにより完治することも多いのですが、まれに腸管外アメーバ症といって肝臓などに大きな膿瘍をつくり、何年も後に発見されるケースや、アメーバ赤痢を繰り返し、薬に耐性をもち症状が改善しにくくなるケースもあります。
突然の下痢に加え発熱、激しい吐き気をともなう場合もあり、病院を受診するまでのあいだはかなり苦しいものです。

症状改善後、患者さんからの「何に気をつければ予防できるのでしょうか?」という質問の答えにはいつも苦慮します。
当然水道水を直接飲まないこと、加熱処理したものを選ぶこと、外食時カットフルーツは食べないことなどははっきりしているのですが、これを突き詰めていくと、歯磨きのうがい水、定食についてくる少量のサラダ、果物ジュースに含まれる氷、デザートについてくる一口カットフルーツなどにも気を遣わなければならず、食べられるものが本当に限られてしまいます。

また魚介類が豊富なフィリピン料理や日本食レストランでの刺身やお寿司を好む人も多いため、生の魚介類を口にすることの「絶対禁止」は言いにくく、言われても実際は実行しにくいものです。
日本同様に生野菜やお寿司、刺身などを頻繁にフィリピンで食べてもまったく下痢にならない方もいれば、いっさいの生物や水道水は直接口にせず大変食事に気を遣っている方が何故かアメーバ赤痢で来院することも多く、必ずしも無防備な食生活が下痢の発生頻度と比例しないこともあります。

先日米国国際開発庁(USAID)がフィリピン各地の井戸水の水質を調査し、飲料水の50%から大腸菌などの細菌を検出したと発表し、世界でも下位にランク付け、汚染された水による病気(下痢、腸チフス、コレラ、アメーバ赤痢など)の増加を指摘、警告しました。
下痢はフィリピンの罹病率第一位であり、毎年80万人以上が下痢で受診し、乳幼児を中心に約1万人が死亡しています。

大腸菌等が飲料水に混入する原因として、米国国際開発庁は川や湖が汚物で汚染されているだけでなく、浄化槽の定期的な水質検査の怠りやタンクの構造自体の問題などもとりあげ、浄化槽からの汚染水の流出は飲料水に混入し得ることなどを指摘しています。また疾病対策として新しい浄化槽の設置、タンクの質の向上、定期的な水質検査をおこなうこと、またトイレ後の手洗い、食事前の手洗い、水道水や井戸水などは煮沸して飲むことなどを指導しています。

雨季にはいってから下痢患者の急増も上記のようなことが関連しているとすれば、完璧に予防することは難しいにしても、結局はまめな手洗いや生物は避けるといった本当に基本的な心がけが唯一の予防手段となるのは間違いないようです。
「わかっているが、おいしいものは是非食べたい」と普段から考えている方(実際はこういう方々が大半だと思います)はせめて雨季だけでも控えたほうがよさそうです。
 


◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  


◇結核 ――― 咳が1ヶ月以上続けば主治医に相談してください

ジャカルタでは咳が長期に続く患者さんが多くいます。
大気汚染の影響や、エアコンのカビにより症状が続いている方も多いようです。
多くの方は風邪症状がなかなか取れなくて困っている方々で心配はありません。

しかしその中に、“結核”が隠れている患者さんがいます。
結核はヒトからヒトへ空気感染する伝染性疾患です。
肺結核は初期の症状が軽いことが多いため、患者さんが発症してから受診するまでの期間が長く、医師も結核を疑っていないと診断に遅れが出ることになります。

日本の厚生労働省によれば日本でも毎年“3万人以上”の新登録患者数が発生しています。スエーデン、オーストラリア、米国などと人口比で比較すると日本はこれらの国の5~6倍の発症率となっています。
日本では患者さんの届出制度、保険制度があるため、検査も治療もインドネシアよりはきちんと行われている傾向にあると思います。
しかしインドネシアでは結核の診断、治療法も様々で、届出もほとんどされていないのが実情です。

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室でもこれまでに結核の患者さんが出ており、最近流行の傾向があります。
肺結核の診断は臨床症状により結核を疑うことから始まります。
しかし肺結核に特異的な症状はありません。
胸部レントゲンや痰の検査をしないと分からないことがほとんどです。

以下のような症状の方は信頼できる主治医に相談してください。
1)数週間以上続く風邪症状(咳、痰、特に血痰がある場合)、
2)食欲不振がつづく
3)倦怠感がつづく
4)体重減少
5)生理不順(更年期でないのに)がつづく
6)微熱がつづく

肺結核を疑ったら必ず胸部レントゲン検査を実施しましょう。肺結核であればレントゲンで異常がみつかったり、胸水の貯留が認められることが多いです。
「肺結核が否定できない異常所見」があれば結核菌検査をしましょう。
日本では早朝喀出痰を日を変えて3回検査することが勧められています。痰が採取できないときは、早朝空腹時の胃液を採取します。時には胸水を注射筒で穿刺して検査をします。

結核の診断の遅れは「的確な結核の検査がされていないため」であるとも言われています。
胸部レントゲン検査は結核の診断に有効なのみでなく、肺癌や胸部腫瘍発見のきっかけにもなります。
定期健康診断を受けるのはもちろん、風邪症状が長引き“なんかおかしいな”と感じたら必ず信頼できる主治医に相談してください。
結核はきちんと治療をすれば治癒する病気ですので心配ありません。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇急性アルコール中毒について

大連中心医院の星野です。今回のテーマは“お酒”についてです。当地における“(飲酒にまつわる)中国人の慣習”の一つとして、“乾杯”や“干杯”があります。“お酒は1人で飲むものではなく、皆で一緒に(というより同時に)飲むものである”、“杯を空にする(飲み干す)ことは相手に心を開いていることの証しである”というような当地独特の慣習です。

昔から”酒は百薬の長“と言われている通り、疲労回復、食欲促進、ストレス解消、(適量であれば)睡眠導入効果があるほか、人間関係をスムーズにするなどの効果が期待出来ます。特に、赤ワインに含まれる“ポリフェノール”という物質は動脈硬化の進展を予防する効果があることが、科学的にも証明されています。しかし、その一方で過度の飲酒は“急性アルコール中毒”以外にも、”アルコール依存症”、“アルコール性肝炎”、“脂肪肝”、ひいては“肝硬変”、“肝臓癌”などのいろいろな疾患を引き起こす可能性があります。今回はこの中で、“急性アルコール中毒”を取り上げたいと思います。

“お酒に酔う”場合、その酔い方の程度は血中のアルコール濃度に正比例します。つまり、摂取したアルコールの量が増えれば増えるほど、血中のアルコール濃度は上昇します。いわゆる“ほろ酔い”の状態は、血中のアルコール濃度が大体0.10%程度(血液100ml中に純アルコールが100mg含まれている状態)の状態であり、知性や理性などの“高次の脳機能”が、喜怒哀楽や食欲・性欲などのいわば“原始的な欲求”を制御している状態が一部解除されるために、一般的にはお酒を飲むと人は陽気になり、雄弁・饒舌になります。

しかし、清酒を3合程度一気に飲んだ場合、飲み始めて約1時間頃に血中アルコール濃度はピークに達し(約0.15%)、血中のアルコールが完全に消失するまでに少なくとも10時間程度かかるといわれています。清酒を3-4合、5-8合、1升以上飲むと血中アルコール濃度はそれぞれ、0.20~0.25%、0.30~0.40%、0.50%以上となります。飲酒量が増えるにつれて注意力、集中力、記憶力などが鈍り、自分の感情を抑えることが出来なくなり、ひどい場合には起立・歩行もままならない、いわゆる“泥酔状態”なります。時には意識消失、呼吸停止、心停止を起こし、最悪の場合には死に至ることさえあります。

清酒(アルコール濃度15-16%)1合はおよそビール(アルコール濃度4-5%)大瓶1本、ワイン(アルコール濃度13%)グラス2杯弱(1杯120ml)、焼酎(アルコール濃度25-30%)半合、ウィスキー(アルコール濃度40-43%)(ダブル)1杯に相当します。中国の代表的なお酒である“白酒(バイジュー)”はアルコール濃度35%から55%であり、ロシアの蒸留酒であるウオッカはアルコール濃度が60%程度であり、原液を一気に飲み干すと急性アルコール中毒を起こす可能性が高く、非常に危険です。健康成人の肝臓が処理出来るアルコールの最大量はお酒の強い弱いに関係無く、体重1kg当たり、1時間当たり、純アルコールにして0.1gとほぼ一定です。つまり、体重60kgの人が一日かけて、代謝出来るアルコールの量は約145gです。145gのアルコールとは清酒なら約6合、ビールなら大瓶で6本、ダブルのウィスキーなら6杯、ワインなら6杯に相当します。したがって、この量を超えると、酔いがさめても肝臓は一日中休み無く働いていることになります。

各種の疫学的研究の結果から、“節度ある適度な飲酒”としてのアルコール量は一日平均約20g程度とされています。また、この量を超えると、一日当たりのアルコール量が増加するに従って、死亡率も増加することがわかっています。これは清酒なら(1合180ml)約1合、ビールなら中瓶(500ml)1本、ウィスキー(ダブル60ml)約1杯、ワイン(1杯120ml)2杯程度に相当します。

また、お酒の飲みすぎは心臓への負担も大きいため、飲酒時に一時的に血圧が低下しても、翌朝にかけて、上昇することもありますので、もともと狭心症などの動脈硬化性の疾患を有する場合には、十分な注意が必要です。また、急性アルコール中毒が疑われる場合には、吐物を喉に詰まらせないように注意するとともに、楽な姿勢を取らせて、飲水が可能な状態であればなるべく多目に摂取させることが必要です(重症の場合には、医療機関を受診し、血中アルコール濃度をすみやかに低下させるために大量の輸液(症状次第ですが、だいたい1500-3000ml以上)を施す必要があります)。

また、蛋白質に乏しく脂肪分の多い食生活をしている人に比べて、蛋白質に富み脂肪分の少ない食生活をしている人の方が、同じ量のアルコールを飲んでも、肝臓でのアルコールの代謝速度ははるかに速く、血液中のアルコール濃度の低下もすみやかであることが知られています。したがって、お酒は自分のペースで飲む、出来るだけゆっくり飲む、お酒を強要されそうなときには、最初に、もともと(あるいは体調がすぐれないために)“お酒があまり飲めない”ことを先方に(特に相手が中国人の場合)お伝えすることが必要です。また、お酒を飲む時には、動物性・植物性蛋白質を上手に組み合わせるとともに、十分な量の野菜を摂取することが大切です。これまでの食習慣を変えることは容易ではないのですが、飲酒を常習とする人は日頃から適量の蛋白質を含み、脂肪分の少ない食事をとるように心がける必要があります。また、1日(アルコール量にして)多くても60g以上の飲酒は避け(理想的には20g以下)、週の中日や週末には肝臓を休ませる“休肝日”を設けるとともに、少なくとも年に一回は肝臓の状態をチェック(血液検査、腹部超音波検査)することが大切です。