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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL05070101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポールの医師不足

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇シンガポールの医師不足

近年、シンガポールで働く外国人医師の数は増加しています。シンガポール国内で登録されている医師の数は今年4月の統計では7060人ですがそのうち外国人は1560人と約22%を占めます。ここ3年で4%ほど増えています(ちなみに日本は平成14年の統計ですが医師の数262687人、そのうち外国人は764人でわずか0.3%)。

1560人の内訳は、50%強がマレー人(多くはシンガポールで教育を受けている)、インド人13%、フィリピン人5%、オーストラリア人4.5%、ミャンマー人3.5%ほかにスリランカ人、中国人、日本人などです。

これらの外国人は多くが私立または公立の病院で勤務していますが、中には研究職の医師も含まれています。シンガポールで医師不足が叫ばれたのはもう10年以上前からで1996年から医師不足を補うべく外国人医師を積極的に受け入れました。

外国の大学の医学部のうちそのままシンガポールで働ける資格が得られる大学はもともと24大学に過ぎませんでしたが2年前からは71大学(主に英連邦とアメリカ合衆国、日本は入っていません)に拡大されています。また、国内唯一の医師養成機関であるシンガポール国立大学医学部の入学定員は従来150名でしたが1996年から230名に拡大されました(人口比からするとこれで日本とほぼ同じ)。

それでも医師が不足しているのは
①人口高齢化(65歳以上人口はまだ総人口の8%ですが平均寿命は男77.4歳、女 81.3歳に達しています。(日本の65才以上人口は19.7%(2005年2月)です。)  ②国民がより高い質のヘルスケアシステムを求めるようになったことなどが挙げられますが、③シンガポールが強力に医療ハブ政策を推し進め、多くの患者が海外から来ていることも要因として挙げられると思います。2004年には23万人の外国人がシンガポールで医療を受けたとのことです。

先頃、SINGAPORE GENERAL HOSPITALから招聘があり、施設を見学させていただきました。施設、機器は最先端のもので、高度にネットワーク化されており、三次元動画CT画像が診断に寄与し、遠隔操作で人間の手の代わりをするダビンチという高度先端医療ロボット(日本でも慶応大学などで)などを使って実際に手術が行われていました。またレーシックという近視の外科的治療が積極的に行われていました。(シンガポールをはじめ台湾、日本などは近視の多い国として知られています。)また、アメリカ、イギリスなどの有名医科大学などでトレーニングされた医師も多く見られます。

施設のみならず、人的にも高度先進医療を提供することにより医療ハブをより確実にしようとする姿勢が伺えます。日本人の患者も積極的に受け入れたいとのお話も伺いました。

ちなみにシンガポールの公的病院は大きく2つのグループに分かれ、傘下にポリクリニックという大型の外来クリニックを持ち、互いの画像情報、検査結果がネットワーク化されています。医師は離れた外来クリニックにいながら遠くの病院に入院した患者さんの検査データや画像、治療状況などを知ることもできます。情報の共有、迅速化という意味でこれも高度医療に寄与しているといえるでしょう。

医師不足は医療ハブを提供するための国の方針と密接に関係しているようです。


◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇出産事情

カトリック教徒が人口の8割を占めるフィリピンでは、避妊の習慣は少なく死亡率約4.2(対人口1000人)に対し出生率約21(対人口1000人)と毎年人口は増加の一途をたどっています。

また経済的理由により自宅での自然分娩を選択する場合が多く、その割合は67%にも達します。一方病院で出産をする場合は出産方法の選択肢は広がってきます。帝王切開と無痛分娩の選択が全体の9割を占め、残りの1割が自然分娩、ラマーズ法、一部の病院では水中分娩なども選択可能となっています。

費用は出産方法にもよりますが、日本円で25万円から35万円ほどです。フィリピンの主要な総合病院では最新の設備を整え、欧米諸国同様の出産を選択することが可能となっています。

家族帯同での邦人駐在員の数は年々減少していますが、それでも当日本人会診療所の産婦人科では毎月20名前後の妊婦さんが定期健診を行い、2~3名がフィリピンで出産しています。希望すれば夫の立会いも可能です。日本人の場合は無痛分娩を選択される方が多く、次いで、自然分娩、帝王切開の順となっています。

フィリピンはオープンシステム医療で、医師が個人のオフィスを構え、そこから病院や診療所に出張するシステムであり、主治医とはいつでも携帯電話で24時間連絡がとれるようになっており、定期健診から出産まで同じ主治医にみてもらうことが可能です。

出産費用は海外傷害旅行保険では対象外となりますが、国民健康保険など、所属の健康保険組合から帰国後に「出産一時金」を受け取ることができます。また出産時の帝王切開、未熟児診療、乳腺炎の治療費なども日本で医療費の払い戻しを受けることが可能です。病院での出産証明の発行など揃える書類は各自治体ごとに基準がありますので、事前の問い合わせをおすすめします。
 

◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇禁煙ありがとうございます

この1年間の間にジャカルタでは多くのタバコ愛好者が禁煙に協力してくれました。ありがとうございました。

たばこは古くからの嗜好品ですが、喫煙によって肺がんをはじめとする多くのがん、心臓病、肺気腫、気管支炎、未熟児、早・流産等妊娠に関連した異常のリスクが高くなるという疫学調査の結果が報告されています。例えば、肺がん・喉頭がんは10倍以上の発症率となります。

さらに、喫煙者周囲の受動喫煙も、肺がん、子宮頚がん、乳がん、心臓病などの血管障害、子宮内胎児発育不全などのリスクを増大させています。たばこの健康影響に関する認識を一層向上させ、全ての人々に知ってもらうことが必要な時代になっています。

たばこの煙の中には、約40種類の発がん物質を含む、数百種類の化学物質が含まれています。タールやベンツピレンなどによる「肺がん」が有名ですが、さらにニコチンや一酸化炭素による心臓や脳の血管障害も、深刻な問題とされています。中性脂肪や悪玉コレステロールを増やすとともに善玉コレステロールを減らし、動脈硬化をおこしやすくなります。糖尿病、高血圧症の方、動脈硬化が進行している方は、喫煙によって脳や心臓の血管がつまったり破れやすくなります。

それでも皆さんは命と引き換えにタバコを吸い続けますか?

日本では禁煙のためにニコチンパッチやガムが医療用として使われています。しかしこれらはニコチンを身体に強制的に入れるだけの“薬(毒)”です。副作用チェックのため定期的な心電図検査や血液検査も必要です。たばこをやめたい人が、ニコチンによる一時的な離脱症状(体内のニコチン濃度が低くなり、イライラや集中困難が起きること)を和らげることはできますが、“たばこ嫌い”にさせたり“自然に止められる”わけではありません。
禁煙を達成するにためは、まず本人の強い意思と決意が大切です。

私は日本で何百人もの患者さんにこれ等の“薬(毒?)”を処方してきました。これらを使用した方の何人かは禁煙に成功しました。

しかし禁煙に成功した方々は“薬(毒)”が効いたというよりも患者さん御本人の「意思」による力が強かったのだと感じています。

今ジャカルタではこれらの“薬(毒)”を使わずに、何十人もの患者さんがタバコを止めることに協力してくれました。タバコによるリスクをきちんと説明し、それらを理解してくださった方の多くが禁煙に成功しました。“薬(毒)”を処方しないので病院としては儲かりませんが、医者にとっては何よりうれしいことです。ありがとうございます。

喫煙は心臓病、脳卒中、多くの癌など生活習慣病の大敵です。
お父さん、お母さんは自分とご家族の健康を守る義務と責任があります。
タバコ愛好者の皆さん、家族の誕生日や結婚記念日などを機に禁煙をしてみませんか。
自分のためだけではありません。いつも側にいるご家族のためでもあります。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇輸液~その意義と限界について

“輸液”は水分や電解質(各種ミネラル)、栄養分(ブドウ糖、アミノ酸、脂肪分、ビタミン、各種微量元素など)を直接、血管に投与する治療法であり、一般には“点滴”と呼ばれています。

当地、中国では“輸液”が(必要以上に)頻繁に行われる傾向があり、当地の病院に行くと疾患の種類や重症度と関係無しに(軽い“かぜ”であっても)、必ずといっていいほど、“輸液”(ならびに抗生物質の点滴)が行われています(抗生物質の乱用による“耐性菌”の問題については別の機会に報告させていただきたいと思います)。

:輸液の意義:

一般に、通常の食事が摂取可能で、適度な飲水が可能である限り、人間の体は必ずしも輸液を必要としません。体内で欠乏している物質がある場合、人間はホメオスターシス(体の恒常性)を維持するために、欠乏した物質を経口摂取するような行動をとります。

例えば、水分欠乏があれば“口渇中枢”という脳の一部が刺激されることにより、飲水行動が促されますし、お腹が減り、血糖値がある程度、低下すると、“摂食中枢”が刺激され、食事摂取が促されます。逆に、特定の物質(アルコールや薬物などの他に、細菌毒素など体に有害なものも含む)を取り過ぎた場合には“嘔吐”や“下痢”のように直接、体外に排泄する働きもあります(このため、吐き気止めや止瀉薬(下痢止め)を安易に使用することは、一般に、好ましいことではありません)。

経口摂取された各種物質(水分、電解質、栄養など)は消化管にて分解・吸収された後、肝臓や腎臓で代謝された後、尿中あるいは便中に排泄されるのが“生理的(体の本来の働き)”であると考えられます。したがって、各種物質が消化管から吸収されるという

“生理的な”状態に1日でも早く戻ることが重要です(輸液は経口摂取が十分可能になるまでのいわば“橋渡し”的役割を果たします)。

:輸液の目的:

輸液をする目的としては、例えば以下のような場合が挙げられます。
① 脱水症などで水分や電解質の高度の欠乏があり、それらの物質を比較的すみやかに補充する必要がある場合
② 食事の摂取量が極度に少ないために、栄養を補う必要がある場合(いわゆる“維持輸液”)
③ 急性胃腸炎、高度な腸疾患などで、嘔吐あるいは下痢がひどく、“腸管を安静にする”必要がある場合
④ 各種薬剤(抗生物質、ステロイドなど)の溶媒、つまり、薬剤を非経口的(経静脈的)に投与するための“手段としての輸液”
⑤ 急性アルコール中毒を含めた薬物中毒などで、高度の意識障害が有り、経口摂取不能な場合の“治療としての輸液”
⑥ 急変時に対応出来るように“点滴ルート(経静脈的に薬剤を投与するためのもの)を確保するための輸液”
などがあります。

:輸液の絶対適応:

意識障害や全身状態不良などで、経口摂取がどうして不可能な場合や、それでは追いつかない病的状態が発生し、継続した場合、この時点で初めて輸液の可否を検討します。

内科的にみた場合、本当の意味で輸液が必要になる対象として、食欲不振が高度で継続する場合、嘔吐・下痢が持続する場合、食事摂取自体が禁忌の場合(腸閉塞など)、急性薬物中毒などで生命の危険がある場合、循環・呼吸動態に変化がある場合など、疾患自体が重篤である場合に加えて、高齢者の場合が挙げられます。

なぜなら、高齢者は若年者と比べて、認知機能低下、口渇中枢・体温調節中枢の機能低下などにより、発熱、下痢、嘔吐で容易に脱水になり、食事摂取が不可能になることが多いからです。

:輸液の限界:

市販されている人工的なもの(輸液製剤)だけで長期間、輸液を行おうとすると、各種物質の“出入り(体に入る分と出てゆく分)”のバランスをとるのが非常に難しく、症状が出なくても、実際には特定の物質が足りなくなったり、また過剰になり過ぎたりするなど輸液による副作用が起こり得ます。

実際、患者さんが経口摂取出来るようになり、輸液を中止すると、電解質を含めた“バランス”がかえって良くなることもあります。

このことからも食物を口から摂るということが生体を維持する上でいかに重要であるかがわかります。従って病的状態であっても経口摂取が可能な場合には、まず、お粥など消化の良いものを摂るようにしたり、食事中の塩分を少しずつ増やしていくなどして食欲を増進させることが重要です。逆に安易に輸液に頼ることはバランスの維持という観点からすると、必ずしも好ましいことではありません。

入院して輸液をする場合には点滴終了後、数時間、経過を観察出来るため、急速に注入することも可能です。また、容態が悪い場合に、2本目、3本目を投与したり、輸液の内容を変更するなど、次の手を打つことが出来ます。

しかし、外来・往診での輸液の場合には終了後、数時間の経過が追えないこと、必要な検査が出来ない(特に往診の場合)などの理由で、どうしても安全な方になりがち(少な目の量でゆっくりとした速度で注入)であり、結果的に、輸液の本来の目的である"必要量の輸液"を行うことは難しくなります。

:入院して輸液をした方が良い場合:

① 意識障害や血圧低下など重症の脱水症や電解質異常が考えられる場合
② 脱水症以外に循環器系(心筋梗塞、うっ血性心不全など)、呼吸器系(重度肺炎、喀血(気道からの出血のこと)、急速に進行する呼吸困難など)、消化器系(大量吐血・下血などのいわゆる消化管出血など)、中枢神経系(脳卒中、全身性けいれん、意識消失など)、腎・尿器系(急性腎不全、急性腎盂腎炎など)の疾患が疑われる場合

以上のような場合には疾患の診断ならびに重症度判定、適切な治療方針の決定のために、採血、尿検査、培養(血液、喀痰、尿、便など)、血液ガス、X線、超音波、CTなど各種検査が必要なことが多く、病態によって必要な薬物が異なってくる可能性もあるので、入院して輸液を行った方が効果的かつ安全です。