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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL05060101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇デング熱対策

 今月もデング熱に関連した報告です。今年の1月、2月、1000人を超える患者の発生があり、1991年来の最多数を記録した昨年と比べても、4倍のペースで患者が発生していました。その後、徐々に落ち着きをみせてはいますが、3月には654人、4月には497人、5月は途中経過ですが約300人となっています。シンガポールでは2001年以後、気温がさらに上がる6月から8月にかけて患者数の増加が見られます。(卵から成虫になるまで、気温が摂氏15度なら40日かかりますが30度なら7日しかかからないとのことです。僅かの温度差も発育速度に影響があるのでしょう。)

そのため、政府は警戒を強めており、デング予防のための国を挙げてのキャンペーン(Mozzie Attack programme)を開始し、ボランティアを募り、各家庭への予防知識の普及に努めています。知識を与えられた側は今度は責任が生じるということなのでしょうか、結果として蚊が増える温床を作ってしまった人は罰金を科せられることになりました。1回目は100シンガポールドル(約6500円)2回目となると倍の200シンガポールドルとなるそうです。2月にこの制度が始まってから、5月半ばまでで、400人が罰金を課されたそうです。国民の意識の向上からなのか、それとも罰金の効果なのかはわかりませんが、上記のように患者数は減少傾向です。4月には1290ある全ての一般医(日本の開業医にあたる)にデング防止パンフレットが配布されました。そして、全てのHDB(市民の大多数が居住している集合住宅、日本の公団住宅のようなもの)とコンドミニアム(日本の高級マンションに近い)のエレベーターホールに一連のポスターを貼るという活動がこの6月中に始まり、7月までに庭を持つ個人住宅の全てに殺虫剤を含むデング予防キットが配布されることになっています。

デング熱パンフレットの内容は具体的です。内容は蚊の発生源であるため水を作らないための注意が主体です。一部抜粋しますと “いつもやるべきこと”としてバケツはひっくり返しておく、ひっくり返すだけでは不十分で雨のかからないところに置く、そうしないとバケツのふちの僅かなくびれにも水がたまるということが絵入りで説明されています。ほかには“一日おきにすべきこと”として花瓶の水をかえる、鉢植えの皿の水を捨てる、溝や庭の落ち葉をそうじする、これにも具体的な図があり、落ち葉の上の僅かな水溜りも蚊の発生源になるということが説明されています。その他、月に1回やることや長期不在にするときの注意などが書かれています。説明が具体的なので行動に移しやすく、デングの発生防止に寄与すると思われます。

罰金の是非はともかく、具体的な知識を与え、個人にも責任を持たせるという考え方は好ましいものに思われます。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇結核

フィリピンでは現在でも毎年340人に一人が結核にかかり、毎年2000人に一人が結核で命を落としています。WHO(世界保健機構)の協力のもと、DOTS(直接服薬確認療法といい薬を患者に任せるのではなく、患者が服用するのを医療従事者が目の前で確認し、服用を支援する方式)も各地で普及し早期発見や治癒率も上昇しつつありますが、依然として結核罹病率は世界のトップ10に入っている状況です。

比国に住む邦人の中には「自分だけはかからない、大丈夫」といった考えが根拠なく浮かんでくる方が自分も含め多いようです。しかしここ数ヶ月で邦人の日本帰国直後の結核罹患や、比人労働者の結核罹患による同じ職場の日本人駐在員のフォローアップなどのケースが数件発生しています。その場合フィリピンでは特に決められた接触者検診制度はなく日本の保健所や産業医と連絡をとりながら、個別に対応をしています。

比国においては従業員、家族も含めた年に一回の健康診断に加え家事援助者などの定期健康診断も早期発見、予防には必要と思われます。さらに咳、微熱、痰、倦怠感などの症状が二週間以上続持続する場合は早めに医療機関を受診しましょう。結核は感染してもすべての人が発病をするわけではありません。また発病しても薬物治療によって多くは治る病気です。医師から外来通院許可がでた場合、周囲は過剰に心配する必要はありません。さらに感染しても発病しないためには、普段から体の抵抗力を高めるような健康管理も大切です。
 


◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  


◇インドネシアにおけるストレス-「仮面うつ病」
―――――周囲の方ができること―――――


海外、しかも発展途上国インドネシアに派遣されたことで精神的に不安定になり、家族、会社、現地社会とのコミュニケーションが思うように取れずに悩んでいる方はとても多いと感じています。
閉鎖された狭い日本人社会で、相談相手もなく、本人だけで問題を抱え込みどんどん迷路に入り込んでいってしまう方もいます。
本人も希望し家族や周囲の了解も十分得られて赴任したはずなのに、現地に着いてみたら自分の想像していた環境とは全く違っていて失望した方もいます。
本来は希望していなかったのに会社の指示で派遣され、本人や家族に強いストレスがたまり、うつ状態に陥っているケースもあります。

日本の年間自殺患者数は3万人を超えています。交通事故死亡者の3倍以上です。日本国内で毎日80人以上が自殺しているのです。その主な原因はうつ病です。うつ病は「気分が憂鬱になって元気がなくなってしまう心の病気」と考えられています。しかし、うつ病の中にはうつ病本来の精神症状が目立たず、身体症状が前面に出て、まるで身体の病気にしか見えないものがあります。身体の病気という仮面を被っているように見えることから、このような病態を“仮面うつ病”と呼んでいます。
うつ病になりやすい人は、まじめで、責任感が強く、仕事も一生懸命に打ち込む人に多いと言われています。

以下にジャカルタにおける診療を通して感じたことを書いてみました。
一般の医学教科書とは異なる内容かもしれませんが、心の問題で悩んでおられる方々の参考になればと思います。

精神的ストレスが貯まり心の悩みが強くなり、うつ状態になる方がいます。その結果精神症状以外に以下のような身体症状が出ることがあります。
1) 睡眠障害(寝つきが悪い、何度もおきてしまう、早朝覚醒など)
2) 消化器症状(食欲不振、何を食べてもおいしくない、腹痛、吐き気、便秘、下痢など)
3) 全身倦怠感・疲労感(休養をとっても疲れが取れない、朝起きた時からだるい)
4) 疼痛(腰痛、胸痛、腹痛、四肢の痛み、歯痛、舌痛など):午前中に痛みが強いことが多い
5) めまい、耳鳴り
6) 自律神経症状(頭痛、動悸、発汗、シビレ)
7) 月経不順、性欲減退

ここで注意しなければならない大事なことがあります。上記のような症状が“心の問題が原因”であると診断するには、内臓疾患、脳血管疾患、整形外科疾患、婦人科疾患、膠原病、内分泌疾患(ホルモン異常)などを否定する必要があります。これらを鑑別せずに初めから精神疾患として治療され、取り返しの付かない結果になった例もあります。

発展途上国でうつ状態を引き起こす要因には次のようなことが考えられます。
1) 途上国の厳しい自然・社会環境の中で自発的に活動を進めていかなければならない
2) 言葉や習慣の違い、宗教の違い、これらに直面しさまざまな制約を受ける
3) 狭い日本人社会の中での問題
4) 会社組織内の問題
5) 家族の中での問題、子供の問題、教育の問題
6) 夫婦の問題
7) 友人関係の問題
8) 病気への不安、現地医療環境への不安
9) くり返す持病の不安
10)恋愛関係の問題
など。

患者さんが抱えている問題には、海外に出たことで初めて問題が生じる場合と、もともと問題があったものが海外に出たことで顕在化する場合があります。
途上国での生活の困難を明るく、前向きに、そして謙虚に乗り越えていこうと努力できる人は問題解決の方法を見つけていけるようです。

発展途上国、国際社会の中で生きていくための問題の解決方法は個々により異なると思いますが、以下のようなことも解決への方法ではないかと思います。
1) 現地の人(日本人を含む)の存在を認めること、存在を否定しないこと
2) 現地の人を嫌いにならないこと
3) 自分を現地の社会から途絶させないこと、隔離しないこと
4) 現地の人とコミュニケーションするために積極的に生きていくこと
5) 自分のアイデンティティを持っていること(これが極めて難しい)

医学的にはカウンセリングを受けたり、薬剤の力を借りることが有効なこともあるでしょう。そのような時は自分ひとりで悩まずに、信頼できる医師に相談してください。
しかし、医療や本人の努力のみでは改善できない問題も多くあります。所属会社の協力、家族や友人のサポートも非常に大切です。
そして問題を乗り越えた方たちには、結果として積極性、忍耐力、適応力、そして現地の人々を尊重する謙虚さが大きな財産として生まれているようです。

ヘレンケラーの恩師サリバン先生は、ヘレンケラーへの同情や偽善、軽蔑を廃し、同じ目の高さで接することによってヘレンケラーを導き、目覚めさせたと言われています。相談を受けた周囲の人もサリバン先生と同じように、“悩んでいる人”に対し同じ目線で接し、語ることで改善策を一緒に見つけていく姿勢が大切だと思います。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇急性腸炎

大連市中心医院日本人医療相談室の星野です。前回は当地で頻度の高い疾患ということで“かぜ(風邪)症候群”を取り上げさせていただきました。今回は、年間を通じて比較的頻度が高く、これから夏に向けて大連においても増加することが予想される疾患として、下痢、嘔吐、腹痛、発熱などを主症状とする"急性腸炎"を取り上げたいと思います。

急性腸炎の原因としては“感染性”のものとして、細菌性(サルモネラ、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌、赤痢など)、ウィルス性(ロタウィルス、アデノウィルス、エンテロウィルスなど)の他、稀にはアメーバ赤痢などの原虫(寄生虫の一種)によるものが挙げられます。

一方、“非感染性”のものとしては食事性、アレルギー性、消化吸収障害、内分泌疾患(甲状腺機能亢進症など)、機能性(過敏性大腸症候群など)、免疫不全などが挙げられますが、こちらは2週間以上続く“慢性腸炎”の場合が多く、精密検査を必要とし、治療方針が異なります。

“急性腸炎”のうち細菌性のものは、一般には“食中毒”と呼ばれ、主に細菌(食中毒菌)に汚染された食品を食べることによって起こります。症状は下痢、嘔吐、腹痛、発熱などですが、原因菌により、便の色や性状(血便、粘液便、膿様便など)が異なり、ひどい場合には脱水症、神経症状などを伴い重症化することもあります。食中毒菌が付着している可能性がある食品としては鶏卵、肉類、サラダなど(サルモネラ)、鶏肉、牛乳など(カンピロバクター)、魚介類(腸炎ビブリオ)、肉類など(病原性大腸菌)、傷のついた手で触れた食品:おにぎりなど(黄色ブドウ球菌)などが挙げられます。

食中毒を予防するためには、
①手を洗う
②食材・調理器具を洗う
③食物の賞味期限を守る(過ぎたものはなるべく加熱する)
などの“菌を付けないこと”、“菌を増やさないこと”、“殺菌をすること”が重要です。

一般に、急性腸炎の治療は水分、電解質の補充(脱水の程度により経口補液、静脈点滴)、(症状の程度により)吐き気や腹痛に対する薬物療法(対症療法)、整腸剤、乳酸菌製剤等が必要となります。急性期の止痢薬(下痢止め)の服用、ならびに抗生物質の服用については、排菌(病原菌の体外への排泄)を止め、場合によっては症状改善を遅らせる場合もあるので、医療機関に相談してからの方が良いでしょう。