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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL04070101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
吉田 泰司

◇シンガポールの睡眠薬

 シンガポールでは依存性のある睡眠薬を漫然と処方している一般医に対して政府が強い罰則を設けています。これまで、多くの医師が処罰されてきました。それらの薬は長期間服薬していると肝機能障害や腎機能障害を来し、また記憶障害を来す事があると知られています。

 最も重い罪に問われた医師は医師免許を剥奪され、これ以上医師として働くことが出来なくされました。その他にも半年間医業停止や罰金刑にされている医師もあります。最も重い罰金刑は約200万円と非常に高額です。もっともあまりの罰金の高額さに上限を設けようとする動きもあるようです。

 この事件のこまかい事情までは伺い知る事は出来ませんが、恐らく悪気があって処方を続けた訳では無かったと思います。昔から飲んでいる睡眠薬を途中で他のものに変える事に患者か医師が躊躇したためだろうと推測します。でもこういう罰則があって度々適応されれば薬を換えざるを得ません。こういう罰則は日本ではありえません。そういえば日本で病院勤務であった頃夜間当直の時に、この睡眠薬の注射の中毒になっている方の話を聞いたことがあります。その方はその睡眠薬の注射を求めて色々な病院の緊急外来を渡り歩いているとのことでした。

 もちろんこれはごく限られた睡眠薬の話で尚且つ一般医による処方の場合です。睡眠薬に詳しい専門医による処方の場合は依存性が問題になることはないでしょうし、政府も専門医の処方には触れていません(それ相応の理由があると判断できるため)。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
土田 穣

◇日本プライマリー・ケア学会に参加して

先月(2004年6月)横浜で行われた第27回日本プライマリー・ケア学会に参加しまして、小生にとり印象深かった点を報告致します。

神奈川県立保健福祉大学学長の特別講演「ケアの心」と題するお話の次の点でした。

1. 明治時代以降、日本の国策の富国強兵、殖産興業による「強者」中心の社会が構築され、病人などの「弱者」には劣等処遇の原則で対応してきたが、戦後医療法、福祉六法などが作られ、社会保障が充実し、世界最高の寿命、最低の乳児死亡率にみられる「弱者」を守る政策が成果を挙げた由。
国民の健康と医療の保障を、我が国憲法が明文化している意味を思い出させてくれました。現状が当然のように存在するのではなく、作り上げられて現在に至っていることを再認識した次第です。

2. 医療は「皆保険」時代を迎え急速に普及したが、平均化、機会化、専門化、細分化、施設化の道を辿り、病院中心の傾向を生んできた。
人口10万当りの病床数はデンマークで566、米国で467なのに対して、日本は1,600である由です。
我が国はベッド数が多いとはいえ、患者や家族の満足が得られているとは考えにくい実態であり、彼我のこの大きな開きをどのように解釈するのか、大いに考えさせられました。入院日数は病院の評価尺度にもなっていて、短縮化が図られているにも拘らず、これほどの差があることに驚きを禁じえません。

3. 自然死の欲求は強まってきているが、最も高い長野県で25%、低い高知県では12%、オランダの自宅出産が40%なのに対して、日本は1%に達しない。
これも上記の問題と同根のように思われます。我が国の現状は、病院で生まれ、病院で死ぬことが当たり前の文化になってしまっているようです。発展途上国ほど病院での出産を望む欲求が強い傾向がある由ですが、その様な国では衛生面からその実態が理解できます。誕生や死と病院をどのように関係付けるのか、広い議論が望まれます。

4. 最近は「健康は自ら守るもの」「生まれたところで老いる」理念が強調されているが、プライマリー・ケアはその自立支援に他ならないといみじくも述べられていました。
プライマリーとは「はじめに」と「最も重要な」の両義がある。
ケアとは「世話、こころくばり」というより、「高価な、愛すべき」の意があり、愛する故に仕えるのが心であると強調されていました。
一般の開業医(日本人会診療所の医師も含まれますが)は、このプライマリー・ケアを担当しています。そうして、特定の診療科目に限定しない統合診療に対する期待も高まってきており、そのための医師養成にも拍車がかかりつつある様です。

一般演題では、北海道瀬棚町荻野吟子記念瀬棚医療センター村上智彦医師らの「瀬棚町での診療所の役割と評価」と題する中での次の点が印象深かった。
瀬棚町はかつて一人当りの医療費が日本一であったが、現在は日本初となる肺炎球菌ワクチンの公費助成をはじめ、ピロリ菌の尿中抗体検査を検診にとり入れるなど日常の医療活動の他各種保健活動にも積極的に関わってきた現在、予防接種を受ける割合が他町村に比べ高くなって、急患数、入院数が減ってきた由です。他方診療所の患者数が徐々に増加してきているとのことです。

以上の通りですが、今回の学会参加を通じて、プライマリー・ケア医の立場を再認識することが出来たことをお伝えし、報告を終えます。


◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇インドネシア医療事情ー最近の3カ月

2004年4月にジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室に赴任して3カ月が過ぎました。この間の当相談室における疾患をまとめてみました。

当地に特徴的な、日本ではあまり遭遇しない感染症といえばアメーバ赤痢とデング熱です。また、軽傷ですが骨折・打撲・外傷も少なくありません。家屋の床が大理石で作られていることも関連していると思います。

a)アメーバ赤痢:4月/11人、5月/10人、6月/13人と減少傾向なし。

b)デング熱:4月/0人、5月/6人、6月/3人。6月から乾季になり患者発生は落ち着きを見せている。

c)結核:4月、5月、6月ともに患者なし。雇っているドライバーが肺結核を発症したが、邦人雇用主は非感染。

d) 打撲・骨折・外傷:4月/8人、5月/12人、6月/25人と増加傾向。(事故件数が増えているのか、来院する患者が増えているのかは不詳。)

他に日本、シンガポールにての精査・加療を指導した例がいくつかありましたので以下に報告します。
肺がん、脳腫瘍、睾丸がん、皮膚がん、胸水貯留(原因不詳)、肛門周囲膿瘍、B型急性肝炎、イレウス、子宮筋腫悪化、卵巣腫瘍、下肢蜂巣炎、脳梗塞、(前記は日本へ)、マラリア(シンガポールへ)

悪性腫瘍については、日本における健康診断を定期的に受けていれば、より早期発見が可能であった思います。出発前や一時帰国の際に健康診断を受け結果の説明とアドバイスを受けてください。せっかく健康診断を受けても「受けっぱなし」で、その結果に対処すべきことをしていないまま派遣される例が多く見受けられます。

派遣する会社の担当者のご協力もお願いします。日本の大学病院でしか出来ないような特殊検査を当地に来てから希望される方もおられます。ご自分の体です、大切にしてください。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
横矢 佳明

◇中国の保険制度

昨年度は中国の医療保険制度について書きましたが、その保険制度というのは日本のそれとはかなり違います。一言で言えば日本ほど手厚くありません。また、その保険制度というのは国民皆保険である日本とは違い、一部の者しか掛けられていません。統計などはありませんが、大連市で見る限りにおいて外資系企業及び一部の公務員・巨大な中国系企業を除くと保険に入っていないと考えていいのではないでしょうか。特に農村籍の者はまず保険を掛けていないと考えてよいでしょう。
(中国は大都市に住むものと農村に住むものとの戸籍の区分が厳しく、よほどのことがない限り戸籍は移せません。)

今は所得の差が激しく、農村から都市へと多数の人口の移動があります。それらの人々は外地人といわれており、都市戸籍の人々が就きたがらない職業に就いて出稼ぎしているのが実情です。そのような職業は一般に昔の日本でよく言われた3Kの仕事が多く、けがや病気の機会も多くなるはずですが外地人は一般に医療保険に入っていません。従って外地人はよほどのことがない限り病院には行かずに我慢します。

日本の感覚でいるとおかしなことですが、経済的に立場の強い都市戸籍の人は保険に入っており、立場の弱い農村戸籍の人は保険に入っていません。このような弱肉強食の状況は年金やその他の部分でも認められます。中国政府はその格差を埋めようといろいろな政策を打ち出していますがなかなか実績が上がらないのが現状です。

また、田舎の病院は設備が貧弱で医師の技量も高くなく確かな治療・診断を行える状態ではありません。それは田舎では所得が低く、保険制度が整っていないために受診者が少なく設備を整えることができないという事情があります。実際に在留日本人の方の中に大連から100キロメートルほど離れた地域で脳出血を起こした方がいらっしゃいましたが、結果的には大連まで搬送の上手術と言うことになりました。