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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL03060101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
吉田 泰司

◇増加するデング熱

シンガポールはほぼ赤道直下にあり、様々な熱帯特有の感染症が多い様に思われますが、実際は政府の公衆衛生の徹底のためか、ほとんどそのような感染症に出会いません。その中で、デング熱は最も身近な熱帯感染症です。

WHOの調べでは、熱帯地方を中心として、100もの国々で毎年6000万人がデング熱になり、年間3万人が亡くなっています。
シンガポールは2002年には3945人ものデング熱患者が発生しています。これは2001年の2372人と比べても大幅に増加しています。そして、この増加はなにもシンガポールだけでなく世界中でその傾向にあります。
デング熱の患者数は、2000年には46694人、2001年では133018人と、約4倍になったとの報告があります。

これらの理由としては、人口の増加に加え、都市化計画、貧困、生活様式の変化、海外旅行者数の増加、気候の変化が考えられています。
またエルニーニョ等の異常気象により、蚊が異常繁殖するようになったと考えられています。

現在デング熱を予防するためのワクチンは開発中です。
その開発が遅れている理由の一つとして、「デング熱ウイルスは4種類ある」ことと、より重症である「デング出血熱(血液中の血小板が低下する)の存在」があります。
このデング出血熱は、1回目の感染より、2回目の感染時に重症化します。
一度感染し、血清中に既にデング熱ウイルスに対する抗体が存在すると、2回目に別のデング熱ウイルスに感染した時に、デング熱ウイルスが血小板を破壊しやすくなると考えられています。もし、ワクチンにより、4種類全ての抗体が体の中にできれば問題ありませんが、抗体が全部出来ない場合には、かえってデング出血熱を引き起こしてしまう恐れがあるので、開発が遅れています。

ワクチンが完成するまでは虫よけスプレーに頼るしかありませんね。


◆マニラ

マニラ日本人会診療所
土田 穣

◇A及びB型肝炎混合予防ワクチン(TWINRIX)について

小生当地マニラに着任しほぼ二ヶ月を迎えました。
この間、当診療所の人間ドックの検査項目に標記肝炎抗体検査がありますが、両方の抗体が陰性と出る者が目立ちます。
幸いにして、同疾患を小生はここの診療所で未だ診ておりませんが、開発途上国ではご承知のとおり珍しくはなく、お薦めしたい予防接種の一つです。
そこで標記ワクチン(日本では承認されていません。)の接種を上記検査の結果、陰性の人には、特にお薦めしております。
一度の注射で良く、初回シリーズは0月、1月、6月の三回実施し、追加接種は5年ごとに1回すると良いものです。
当診療所での同接種料金は子供(1歳以上16歳未満)は6月9日現在、1回1、242ペソ、大人(16歳以上)は2、285ペソです。

尚、標記ワクチンは欧州では1996年9月23日、米国FDAでは2001年5月14日に承認されています。
参考までに、少々旧聞に属しますが、薬事日報の2001年5月25日版の掲載をご覧下さい

●【米国薬事情報】AB両肝炎ウイルスの予防に新混合ワクチン FDA
薬事日報01/05/25

 FDAは十一日付でA型肝炎ウイルス(HAV)及びB型肝炎ウイルス(HBV)の感染を予防するための新混合ワクチンを十八歳以上の成人用として承認した。このワクチンは「ツインリックス」と呼び、二つの既承認ワクチン、「ハブリックス」(不活化A型肝炎ワクチン)と「エンジェニックス‐B」(遺伝子組み換え型B型肝炎ワクチン)を混合した製品のため、両型のウイルスに曝露の危険が高い人々に接種すれば両ウイルスに対する免疫を同時に得られる。

 ツインリックスはある行動または職業によりHBVの感染危険が高い旅行者や疾病管理予防センター(CDC)がHAV及びHBV両感染症の発生率が高度または中度と指定した各国を訪問する旅行者に推奨される。

 HAV感染症は汚染飲料水または食品の摂取により罹る。衛生状態が悪いまたは洪水などで通常の衛生状態が破壊された地域への旅行はHAV感染の危険が増加する。
 HBV感染症は感染者の血液または体液との接触や汚染注射針の使用、あるいは感染者との予防具を使わない性交などで広がる。医療従事者も危険な職業に考えられる。
 HAV及びHBVの両者の感染の危険が高いとされる地域としては、アフリカ、南米の一部、ほとんどの中東及び東南アジアが含まれる。

 HAV感染は無症候のことがある。しかしながら症候は高年齢層により多く起こり、発熱、倦怠感及び黄疸が典型的である。稀にHAV感染患者の肝不全が進行して死亡する例もある。HBV感染にも無症候やHAV感染に類似の症例がある。少数の成人HBV感染者で慢性肝炎の結果、肝硬変及び肝臓癌になる。

 ツインリックスの臨床試験は三回接種シリーズ(零カ月、一カ月、六カ月)で行われ、同混合ワクチンの安全性及び有効性は個々の既承認HAV及びHBVワクチンと同等と実証された。
 ツインリックスはペンシルベニア州フィラデルフィアのスミスクライン・ビーチャム社が製造販売する。


◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
横内 敬二

◇デング熱

昨年ほどの発生数ではありませんが、4月よりデング熱が流行しています。デング熱は蚊によって伝染する急性熱性ウイルス性疾患です。デングウイルスはサルや人の血液を通じ吸血した蚊とともに数ヶ月生存します。主な感染源は都市部に生息するネッタイシマカで、早朝と夕方に活発な活動をするためこの時間帯には特に注意が必要です。
予防は蚊に刺されないようにすることで、長袖の着用、防虫剤使用が勧められます。

しかし知らないうちに刺されている人がほとんどで個人での予防には限度があり、蚊を発生させない地域対策が求められます。ジャカルタ州保健局の発表では今年5月下旬までの感染者は5,800人、死者は32人であり、州政府は市民に警告を出しデング熱対策を打ち出し蚊の駆除を開始しました。(じゃかるた新聞)

日本ではⅣ類感染症に分類され届出伝染病となっているためか、家族や周囲の人への感染を恐れ神経質になっている人がいますが、人から人への感染はあり得ません。
5日~7日の潜伏期間の後、悪寒、突然の高熱で発症し、咽頭痛、鼻汁、咳や痰などのかぜ症状は無く、高熱に伴う激しい頭痛、全身の関節痛や筋肉痛、吐き気などの症状が一般的な特徴です。発熱後3日~5日で体幹や四肢に麻疹様の発疹が出現することもあります。
診断は血液中のウイルス抗体検査で行いますが、抗体が産生されるまでには約1週間を要し、その間確定診断は出来ずまた高熱が持続し体力が消耗しますので大変厄介な疾患です。

治療はウイルス疾患に共通しますが、ウイルス自体を殺菌的に制圧する方法はなく解熱剤投与や脱水改善のための点滴など対症療法だけです。通常は良性の経過をとり発熱期を過ぎれば峠を越えて後遺症も残らず慢性化することもなく完治します。ただまれにデング出血熱やショックになり重篤な状態になることがあり、慎重な経過観察が必要です。免疫の関与により重症化すると考えられ、小児で2回目に感染した場合にリスクが高くなりますが、幸い相談室開設以来邦人の死者は出ていません。発熱後数日のうちに急速に全身状態が悪化する場合は至急全身管理の可能な病院への入院加療が必要です。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
横矢 佳明

◇当地のSARS対策

最近話題になっているSARSですが当地大連にても感染者が発生していない状況下にてもSARS対策が始まりました。労働節での中国の対策はテレビでもご存知とは思いますが当地での実際の状況を記していきたいと思います。
北京でのSARSの感染が非常に大きな問題となりました。前にも述べた中国の医療事情の話になりますが、医療レベルで区分すると北京・上海・広州の3大都市、その他の沿海地区の大都市(大連・青島・アモイ)や省都、その他の地区と大きく3段階くらいに分けられます。

SARSは感染症ですから入院管理の意義としては患者の病気の管理とともに感染の拡大を食い止めるという2つの目的があります。その目的を達成するに十分な医療施設というのはWHOも指摘しているとおり(広州の医療レベルは例外的であると指摘しました。)中国の医療機関は一部を除き十分ではありません。

問題点としての一つは医療機器や施設というハードの問題点です。3大都市の対応に関しては十分かどうか私にはわかりませんが、大連に限っていえば不十分と思われます。SARSでは発症患者の約2割が人工呼吸器を必要なくらいに悪化したと報告がなされていますが、呼吸管理に関しても十分とは言えないでしょう。また、医療器具に関してもマスクが再使用されていたり、マスク自体もWHOで推奨されているような高規格のものでなかったりもします。もう一つの入院の目的である感染を拡大させないという意味での患者の隔離に関しても完全に隔離できるような病室はそれほど多くはないのが現状です。
また、ソフト面では医療従事者のガウンテクニックに関しても一般には正確に行われていないのが現状です。その他にも医療従事者の一般的な感染症に対しての知識不足も問題点の一つとして挙げられます。

このような状況は大都市から離れていくにつれてハード面・ソフト面ともに問題点が多くなってきますのでWHOはこの感染が大都市以外に波及すれば非常に大きな問題となることを指摘し、中国政府もこれに呼応する形で労働節という中国にとって大きな休暇を短縮し、人の移動を制限し、カラオケ・サウナ・映画館などの不特定多数の人が長時間滞在する場所を閉鎖し、様々なイベントの中止を決定しました。実際に大連にても、5月1日より6月上旬までカラオケなどの娯楽場を閉鎖し、労働節期間に人の移動を制限しました。また、感染地域からの大連入境に関しては入境者は10日間の隔離を義務付けられています。
このような中、日本人社会の動きとしては感染の危険性やその他生活上の不便さを嫌い家族を帰国させるなどの動きが大連でも認められるようになりました。感染の危険性がなくなり生活が普通に戻るまでにはこれから数ヶ月はかかりそうです。