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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL02110101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所 
大西 洋一 

◇東南アジアにおける脳炎

 最近アメリカでの西ナイル熱の流行が新聞で報じられています。このニュースを見て以前にマレーシアで流行し、シンガポールでも患者がでたニパ(Nipah)ウイルス脳炎を思い出しました。少々古い話ですが今回はそれについてお話しします。

 アジアにおける脳炎の最大の主要病原体は日本脳炎ウイルスです。日本脳炎ウイルスは、主に感染したブタの血を吸った蚊に刺された場合に感染し、発症します。マレーシアやインドネシアでは現在も散発的に流行が見られます。
 
一方、ニパウイルスは1998年にマレーシアで急性脳炎患者が発生した時の原因病原体です。患者の数名から日本脳炎ウイルスの遺伝子が検出され、当初は日本脳炎と考えられて、蚊の駆除やワクチン接種などの対策がとられました。

 しかし、急性脳炎患者のほとんどは養豚業の成人男子である点で従来の日本脳炎とは異なっていました。

 その後マラヤ大学の研究者が患者材料から病原体を分離し、この新ウイルスを患者の発生地点にちなんでニパウイルスと命名しました。日本脳炎ウイルスの関与は完全には除外できないものの、そのほとんどが新しく分離されたニパウイルスによるものであったと考えられます。

 感染源としては、豚が密接に関係していると初めから想定されていましたが、人の患者発生以前に豚の異常が認められていたことが、後になって報告されました。人と異なり、豚の場合は肺炎をおこし、神系症状はありません。ニパウイルスは豚の血液、気管支分泌液、及び尿に存在するので、これらの感染源に濃厚に接触することによって人に感染すると考えられました。

 潜伏期間は4-8日間で、最初に激しい頭痛が起こり、こん睡や死に至りますが、人から人への感染や調理した豚肉からの感染は報告されていません。致死率は38%に上り、ニパと日本脳炎のふたつに同時に感染すると致死率は50%を超えるということです。

 最終的に流行における患者は合計265名、死亡者は104名となりました。シンガポールではマレーシアからの輸入豚を取り扱っていた食肉検査所で11人の患者が発生し、1名が死亡しました。結局、マレーシアは約90万頭の豚を処分し、その後患者発生もなくなりました。シンガポールでもそれ以降患者の届け出はありません。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所 
雨森 明 

◇たばこ

 フィリピンは排気ガスのにおいがしますが、日本に帰ったときに東京の町はたばこ臭いと思いました。歩きたばこは多いし、食事をするところでも禁煙はおろか分煙もされておらず、たとえ分煙がされていても禁煙席があるだけで、実質は分煙になっていないところがほとんどです。

 フィリピンマニラでは、公共施設の中は禁煙になっているところが多く、タクシーやレストランも禁煙です。今年、マニラでは禁煙をしていなかった焼き肉レストランが営業停止処分を受けました。そんなフィリピン首都圏でも傍若無人にどこでもたばこをふかすのは日本人です。灰皿がなければ、からになったお皿を灰皿にしていたりします。明らかにこの国では、社会的地位が低い人に喫煙が多いし、都市によっては建物の中の喫煙は罰金刑となるので気をつけましょう。では以下にたばこの影響を。

肺気腫、肺ガン
 肺の構造が徐々に破壊されて換気能を失う疾患で、ほぼ喫煙が原因です。これまで肺気腫は喫煙歴の長い高齢者の疾患とみられてきましたが、実は40歳前後からすでに始まっていることがわかってきました。息切れなどの症状がでた頃にはかなり病態は進んでいます。ある報告によると日本全国で120万人弱の潜在患者がおり、高齢者で肺炎やぜんそくと診断されている中に相当数の肺気腫が含まれている可能性があります。肺機能を維持するためには最善かつ唯一の治療法は禁煙です。高度肺気腫の患者の25%は肺ガンを合併します。低タール・低ニコチンたばこでも、より深くより頻繁に煙を吸い込むことにより、癌を発生させます。軽いタバコのほうが体によいという証拠は全く有りません。肺ガンのリスクは15年禁煙しても正常人より5倍の死亡率があるといわれています。

心臓疾患
 心筋梗塞や狭心症など、1日25本以上の喫煙者では、心臓疾患の相対的リスクは6~15倍に達します。禁煙による心筋梗塞の発症リスクは3~4年で正常となります。

慢性閉塞性動脈硬化症
 動脈が徐々に詰まり血流が悪くなる病気です。四肢末梢の動脈が狭窄した場合は最終的に切断せざるを得なくなることもあります。間接喫煙を含めると全例に喫煙歴があります。軽症の場合は年のせいなどとされることもありますが、年のせいではありません。きわめて予後不良で65歳以上の患者では60%以上の人が5年以内になくなります。

歯周病
 喫煙者の歯周病は健康人の2~8倍です。また、口の癌も発生率が6倍も高いことが知られています。舌や口に粘膜に白斑症といって、白い斑点や薄い膜様の病変がある人は将来そこが癌化する可能性があります。

 たばこを吸うことで健康によいことは一つもありません。また、喫煙の影響は長く残るので、日本人全員が突然禁煙しても、喫煙関連の疾病が実際に減少するまでは年単位の期間がかかるでしょう。タバコによる超過医療費は日本では年一兆三千億円と言われており、入院や死亡による経済的損失や、火災による物損、消防費などを含めると、喫煙による社会的損失額は約五兆五千億円になるといいます。

 喫煙習慣は、ニコチンに対する薬物依存症です。つまり、嗜好ではなく、脳に構造的な変化が生じてニコチンを摂取しなくてはならない状態になるために生ずる病気なのです。日本が喫煙を放置している罪はきわめて重いのです。


◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室 
横内 敬二 

◇水痘・帯状疱疹

 保育所で、水痘(水ぼうそう)の小流行が認められました。水痘は、水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症で、感染力が大変強く、しばしば集団発生します。飛末による空気感染や水疱の内容物による接触感染で発症し、2~3週間の潜伏期間の後に、軽い発熱、食欲不振、発疹が出現します。最初、体に紅斑が現れ、次々に小水疱化し、皮疹は全身に拡がり、一週間位すると、水庖は乾燥して痂皮(かさぶた)となり、瘢痕を残さず治癒します。

 水痘は一般に小児では、経過は良好で重症化することはありませんが、成人では肺炎を併発することがあり注意が必要です。予防は弱毒化された生ワクチンによる予防接種が有効ですが、日本では現在、任意接種となっており、接種率はかなり低くなっています。熱帯地方では、皮疹部位の細菌による二次感染のリスクが高く、予防接種を積極的に受けることを推奨します。

 水痘に感染した後、ウイルスは知覚神経の神経節に、不活性状態のまま長期間にわたり潜伏感染しています。しかし、過労、ストレス、老化、腫瘍や他の感染症などで免疫低下の状態になると再び活性化し、神経節から神経を伝わり皮膚に達して皮疹を形成し、帯状疱疹として発病します。

 症状はまず数日前より神経痛様の痛みやしびれが出現し、その後、知覚神経支配の領域に帯状の小水疱が現れます。皮膚の病変は水痘よりも重く、治癒期間も2~3週間かかり、軽度の色素沈着を残します。また、高齢者では皮疹消失後、神経痛が何ヶ月も持続することもあります。

 帯状疱疹は、比較的高齢者に多い疾患ですが、当地では、30代、40代の駐在員が発症することが少なくありません。熱帯地方での海外勤務生活は、予想以上に過酷な環境にあり、普段から体調に留意して、自然治癒力、免疫力を高めておき、少しでも疲れたと感じた時は、無理をせず早めに休養することが最も大切です。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室 
横矢 佳明 

◇上海の日本人向け医療事情

 10月29日より11月2日に掛けて上海への医療視察をさせて頂きましたのでここに御報告致します。

 上海には日本人が常時3万人駐在しているといわれており、かつ、日本人以外の外国人も非常に多く、その結果外国人向け医療機関が多く見られます。そのうちの4件ほどを見学させて頂きました。そのうちのいくつかは日本人医師が駐在し日本人向け専門のクリニックになっております。施設の概観・設備・対応もすべて外国人向けクリニックは地元向けクリニックとは大きく異なっており、先進国同等のサービスを受けることができます。もちろんプライマリケアのみで重病患者は後方支援病院に搬送することになりますが、普段の健康管理を環境の整ったクリニックで行えるというのは上海・北京・広州を除くとありえないだけに中国国内においては上記3都市の医療面での充実ぶりがうかがえました。そのうちの一つのクリニックは24時間オープンしており電話相談もいつでも可能とのことでした。また、あるクリニックはすべて予約制で一人の外来時間は30分と余裕を持って診察しており欧米のクリニックのようでした。それらのクリニックの話では健康診断なども日本に帰国することなく上海で受けられている方も多いとのことでした。

 私自身、大連での医療を始めてもう半年を過ぎましたが、大連の医療事情と上海の医療事情の大きな違いというのはハード面もさることながらソフト面で著しいと感じました。ハード面に関してはCT・MRI・ガンマナイフなど当院でも一通りは揃っており、その性能も日本の大学病院クラスのものと同じと考えていいと思います。しかし、ソフト面に関しては病気時の対応の迅速さや丁寧さ、細かいところでは受付での対応なども大きく異なっていると感じました。一例を挙げますと、当地では未だに緊急の際でも手続きや医療費の支払いを優先させる向きがありますが上海ではとにかく治療をすぐにでも受けられるように体制が整っている病院が多いようです。また、慢性病のフォローに対して必要な検査も日本と同じく揃っておりました。上海等の一部を除けば糖尿病・高脂血症などの慢性病の存在が明らかになったとしても所得水準が低いためにその後の投薬やフォローを行わないのが普通であり、そのためにそれらのフォローに必要な検査・薬が不足しているのが現状です。当院にても糖尿病に関してはフォローに必要な検査の一部しか存在しません。そのほかにも血液検査の結果が1~2時間で出てくるようになっておりました。今のところ大連では一日がかりとなっている状況です。場所に関しても患者にとって都合が良い場所(例えば日本人が多く住んでいる場所や日本人が多く勤めている付近に存在したりする。)

 以上の様に大連の外国人向け医療とは大きく異なっており、見習うべき点は非常に多いとは感じました。今後の診療所運営の参考にしていきたいと思います。