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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL02100101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール


シンガポール日本人会診療所
大西 洋一

◇シンガポールとヘイズ
 
 インドネシアの山火事の煙が風に乗って飛んでくることをヘイズと呼びます。このところヘイズによる体調不良、上気道、呼吸器症状を訴える患者さんが増えてきています。

 山火事はインドネシアのスマトラ島やカリマンタン島の農民が焼畑の為に野に放った火が森林に燃え移ることが原因で、これがマレー半島西海岸の雨季である5月から9月にかけて吹く南西モンスーンに乗ってやってきて、マレーシア、シンガポールはその直撃を受けるのです。さらにエル・ニーニョと呼ばれる現象が現れた年の異常乾季には、数多くの木が激しい乾燥に耐えるために落葉するなど、森林全体が燃えやすい状態となり大火災に発展することがあります。

 数年前にはマレーシア観光産業は大打撃を受け、シンガポールでは1カ月以上に亘り焦げ臭い煙に包まれ屋外での体育の授業を中止する程の騒ぎになりました。シンガポール政府は、大気汚染指数(PSI)が24時間以上300を超えた場合、学校を休校とするといったヘイズ対策要綱を定めています。この指数は、TV放送により常時掲載されており国民に注意を呼びかけています。また、当のインドネシアでも呼吸器疾患のため死者が出るなど、ヘイズは大きな国際問題に発展しています。

 アセアン環境担当閣僚会議では、各国はインドネシア政府に焼き畑式農業を禁止するよう求めました。合わせてプランテーション農園所有者への、火災発生時の消火を義務づける法令の制定もインドネシア政府に要請しました。一方、シンガポール政府やマレーシア政府は、インドネシア政府へのヘイズ観測機器の提供や森林火災対策に携わる人材の育成を行うなど、積極的な支援策も実施しています。しかし、インドネシア政府の対応は、原因を絶つ“予防療法”というよりも、発生した火災を地道に消火していく“対症療法”の色合いが強いため、周辺国がイライラしているのが実情です。

 ヘイズによる健康への影響には以下のようなものがあります。目の炎症を引き起こす。鼻の粘膜を刺激し鼻水が出る。喉の粘膜を刺激し、呼吸に障害を与える。微粒子が肺組織を傷つける。

 では、ヘイズが滞留する場合どうすれば良いのでしょうか。

 多くの水分を飲み、口や喉を洗浄します。きれいな水で顔や手足を洗い、体に付着したヘイズを取り除きます。なるべく外出を控える。保護マスクを着用し、呼吸により微粒子が体内に入るのを防ぐ。体調に問題がある場合、病院で診察および治療を受けるなどです。

 このヘイズは人間ばかりではなく、農業分野にも大きな被害を及ぼします。畜産分野では、飼養される鶏が、煙中の多量の浮遊微粒子により呼吸器系の疾患を引き起こして抵抗力が弱まるだけでなく、呼吸困難に陥る場合があります。特に、体力の弱い雛はバクテリアに感染しやすい状況となります。鶏卵の生産量は、ヘイズが原因と見られる採卵鶏の成長の鈍化や体調への影響により落ち込みます。

 畜産以外の農業分野においても、ヘイズによる日照および酸素不足が、植物の光合成の過程に悪影響を及ぼし、米、野菜、パームオイルなどの生産量に影響します。また、海中の酸素量が不足しているため、水産養殖、海洋植物にも被害が広がります。

 例年のことですが、ヘイズ対策は大きな環境問題です。


◆マニラ


マニラ日本人会診療所
雨森 明

◇マニラの大気汚染

 マニラの大気汚染は相当のものがあると考えられます。大気中の汚染物質をはかった資料がないので正確にはわかりませんが、道路から離れた家屋に住んでいても、数日で机やテーブルの上に黒いほこりがたまります。特に車の交通量の多い通勤時間帯の道路沿いは想像を絶するものがあります。1キロメートルも道路沿いの歩道を歩けば鼻の穴は黒くなります。大気汚染の原因物質は、工場の排気ではなく車です。私は時々、ジプニーという現地の乗り合いバスを利用することがありますが、体調によっては大気汚染と車の揺れのために気持ちが悪くなります。時によって、道路沿いを歩いているだけで気分が悪くなります。大型乗り合いバスなどは多くが日本製バスの中古品で、窓には日本語が書かれてあったりします。そのバスが真っ黒い煙を吐いて道を走ります。また、ジプニーのエンジンは日本車の中古を使っています。この排気もひどいものです。現地生産の新車でも、日本車だからといって日本の排ガス規制をクリアしているのではないそうです。

 邦人の間で気管支炎が多いと一般にいわれていますが、日常の診療ではそのような印象は受けません。喘息や鼻炎などはフィリピンにいると軽快する人がほとんどです。おそらく、日本とはアレルゲンとなる植物相が違うためでしょう。ただし、長期にわたってマニラのような大気汚染のひどいところにいるとどうなるのかはわかりません。

 日本人は数年マニラに住むだけなのでまだよいのですが、自動車の排気ガスによる大気汚染で人間の健康がこれからどうなってゆくのか、マニラで壮大な実験が行われているようなものです。


◆ジャカルタ


ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
横内 敬二

◇結核

 日本で戦後死亡原因の第一位であった結核は急速に減少し、現在では新規発生患者数は約4万人、罹患率は10万人に対して約30人となりました。しかし、当地においては依然として最も重大な感染症で、罹患率は日本の約8倍と推定されています。行政による結核対策はほとんど実施されていませんので、個人自ら感染防止に努める必要があります。

 結核症は、患者の咳やくしゃみに存在する結核菌を吸入することによって感染する疾患です。最初に肺に病変をつくりますが、感染しても自己免疫により発病するのは一割程度と言われており、普通は自覚症状もなく治癒します。しかし、乳幼児や高齢者、糖尿病や腎臓病などの持病がある人、過労などで抵抗力が低下している人は、発病のリスクが高く特に注意を要します。

 当相談室では今年になって、新規肺結核の患者が2名ありました。2人とも30代の健康な若い方で、症状は軽い咳程度でしたが、年一回の定期健診において発見されました。

 肺結核の診断は、主に胸部レントゲン検査、喀痰検査で行われますが、痰に結核菌が証明されない場合、確定診断は大変困難となります。治療には6カ月以上の長期内服が必要で、正確な診断と適切な薬の選択が求められます。結核が疑われる場合には必ず専門医を受診して診察を受けることが重要です。

 予防は患者に近づかないこと、普段から抵抗力をつけておくことが肝要です。予防接種としてBCGがありますが、感染予防効果はあまり期待できません。しかし、乳幼児の重症肺炎や髄膜炎の発病を抑える効果がありますので、当地のような流行地ではなるべく生後早い時期に予防接種を受ける必要があります。なお、日本でもBCGの接種方法の見直しが行われ、早い時期に一回接種という方針が決定されました。

 結核は身近な人から空気感染します。従業員や使用人の胸部レントゲン検査を定期的に実施し、早期に結核の有無を確認し、対策をとることが予防上最も重要です。

 また、微熱や咳が1カ月以上続く場合は、胸部レントゲン検査を受けてください。

 当相談室では、レントゲン検査、結果説明は当日可能です。


◆大連


大連市中心医院日本人医療相談室
横矢 佳明

◇風邪への対処法

 海外邦人医療基金に派遣されている診療所の中で四季があるのはここ大連だけのようですが、最近は急に寒くなってきております。四季があるといっても正確には一年のほとんどが夏か冬というような状況です。暑かった夏が終わり涼しくなってきたなと思う暇もなくすぐ寒くなってきており風邪を引きやすくなっているので注意が必要です。診療所にも上気道炎にて受診される患者が非常に増えておりますので、一般的な風邪についての話と巷でのよく聞くうわさ話についてのコメントをしたいと思います。

 風邪症候群とはなんらかのウイルス感染によって引き起こされるくしゃみ・鼻水・鼻閉・咽頭痛・咳漱・喀痰・発熱・頭痛・腰痛・全身倦怠感などの症状の総称です。その原因としてはウイルスの存在は当然として、人側の条件としては疲れ・寒冷への暴露などによる免疫力の低下などが挙げられます。

 病気の本体としてはもともとなんらかの基礎疾患があれば話は別ですが一般的に風邪症候群にて重篤な合併症を引き起こすことは稀です。しかしながら今までの治療の流れでは抗生物質・解熱剤を多用する傾向にあります。では、抗生物質・解熱剤は治癒の過程でどのような役割があるのでしょうか?抗生物質に関していえばウイルス減少に効果があるわけではありません。ウイルス感染を起こした過程で体が弱っており細菌の二次的感染を防ぐのに役に立つことがあります。しかしながら、高齢者や既往歴としてよく細菌感染を起こしているような方を除くと細菌の二次感染を起こすことはそれほど多くはありません。したがって上記のような場合を除き、副作用も考慮に入れると特に風邪が長引いているとか膿性痰が多量に出ているとか特別の場合を除けば必ずしも抗生物質は必要というわけではありません。同じように解熱剤もウイルス減少に役に立つということは全くなく、白血球がウイルスに対して環境が悪くなるように出している発熱物質をブロックしているだけなのです。したがって解熱剤を使用し熱が下がって元気になったように感じて体をいたわらないと結局風邪が長引くこととなります。

 最後に大連のみに関わらず中国でよく患者様から聞く噂話で「中国の風邪には日本の風邪薬は効かず中国の風邪薬がよく効く」というものがあります。そのような話をされていた方に中国の薬というのを見せてもらったのですが成分の混合比の違いが多少あるものの日本の一般的な風邪薬とほぼ同じでした。風邪薬に限らず中国の西洋薬と日本の薬はまず同じ薬と考えていいと思います。

 漢方も含めてそもそも風邪の治癒過程でウイルスを減少させる薬というのは今のところ存在しません。風邪に関しては寒冷暴露を避け、体に無理をさせず、水分をたくさん取り、よく寝るという健康を守る最も基本的な生活を心がけることです。予防としての帰宅時のうがい・手洗いの励行も大切です。予防を心がけ、風邪にかかってしまったらゆっくり休むこと。月並みですがこれが最も効率的な風邪への対処法といえるでしょう。