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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL02090101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール


シンガポール日本人会診療所
大西 洋一

◇シンガポールの薬事情

 以前にスリム10という痩身薬についてのトラブルを記事にしたところ、掲載直前に日本でも同様の事件が話題になりました。詳細はすでにみなさんご存じのことと思います。その後シンガポールではそれが思わぬところで問題を招きました。

 シンガポールはご存じの通り小さな都市国家で、多くを輸入品に頼っています。飲用水さえもマレーシアから購入しており、最近マレーシアがその価格を従来の30倍にすると通告し、それならば自国で製造するということで政府は排水を機械的に生成し「ニューウォター」という名でアピールしています。

 その件はさておき、薬品に関しても自国生産ではなく多くはオーストラリアやマレーシア、日本などから輸入しているわけです。人口がそれほど多くないため需要の少ない薬は採算が合わないなどの理由から、輸入されなかったり販売が中止になったりします。

 シンガポールでは日本と違い、A型肝炎とB型肝炎の混合ワクチンが手に入ります。以前は大人用と子供用の両方がありましたが、現在では子供用はありません。シンガポールの子供は出生時すぐにB型肝炎のワクチンは接種してしまうので、外国人の子供しかこのワクチンの需要はないわけです。したがって販売は中止されました。同様の理由から、MMR(麻疹、風疹、おたふくかぜの混合ワクチン)の接種が通常のこの国では、麻疹、おたふくかぜ単独のワクチンは販売されていないわけです。(風疹ワクチンについては必要性が他にもあるので存在します。)日本の子供の場合、これらのワクチンを別々に接種するので、既に日本でいくつかを済ませていることがよくあります。そこで日本の子供には単独ワクチンの必要性があり、従来は保健省に申請をし日本からの輸入許可を受けていました。ところがスリム10の一件以来薬品の輸入が厳しくなり、ワクチンの輸入もどうなるかわからない状況です。他にも、今までは輸入可能であったのに、喘息の子供などによく使う日本にしかない貼るタイプの気管支拡張薬の輸入許可がおりませんでした。本当に必要な薬の入手が困難になってしまい、とんだとばっちりといったところです。



◆マニラ


マニラ日本人会診療所
雨森 明

◇血管梗塞と航空機
 当クリニックに来られた方で呼吸器疾患や循環器疾患を発症し、または外傷を負って入院が必要と判断される方が一ヶ月から二ヶ月に一人くらいの割合で発生します。当クリニックに直接来ない(来れない)方も含めると数字の上では一ヶ月に数人はいると思われます。具体的な病名で述べると、肺炎、肺梗塞(肺の中にある血管が血栓で詰まる病態、いわゆるエコノミー症候群など)、脳梗塞、心筋梗塞などです。

 重要臓器、特に脳や心臓についてですが、梗塞とまではいかなくとも、一時的に血管が詰まり症状が出現しても、幸いなことに短時間で何かの拍子に血栓がとれて症状が劇的に改善する場合があります。むしろ完全な梗塞症よりもそのような梗塞予備症状を来す人の方が多いのですが、そのような症状の現れた人は近く本当に梗塞症を発症してしまう危険が非常に高いのです。これらの病態を発症した駐在員の方を、ご本人のつとめる事業所の方から日本につれて帰ることができないかという相談をしばしば受けます。とくに梗塞予備状態の方の場合は、血栓がはずれて発作がなくなってしまえばほとんど自覚症状もありません。肺炎などのように見た目にも患者がつらそうな状態ならまだしも、上記梗塞予備状態であれば自分たちのホームランドに帰りたくなる、つれてゆきたくなる気持ちも理解できますが、実は非常に危険なことです。

 航空機内では気圧は最低で0.8気圧を下回ります。また、気圧が下がるときに空気に含まれる水蒸気が結露して機器に影響が出ないように湿度もかなり低くしてあります。このような環境に長くいると、乾燥から血液は濃縮し循環が悪くなります。さらに気圧が低いため血中酸素も少なくなります。機内では動くことがままならないのでますます血液循環が悪くなります。さらに、トイレにゆくのを我慢することも多いでしょう。アルコールを飲んだ場合は、アルコールによる利尿作用でトイレにはゆきますが逆に血液は濃縮します。

 もうおわかりだと思いますが、現地で入院を指示されるような病態では、梗塞はもちろんのことその他の病態でも基本的に飛行機には乗ってはいけないとお考えください。安定期に入ったと考えられても、帰国に可否については、患者さんを直接診察した医師にご相談の上で決めるようにしてください。



◆ジャカルタ


ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
横内 敬二

◇過敏性腸症候群
 情報化社会、国際化時代を迎え、社会がますます複雑になり、ストレスに関連する病気が増加しています。その一つに、消化器系では過敏性腸症候群という疾患があります。この疾患は、腸管に炎症や癌などの器質的な病変が認められないにもかかわらず、腸管の運動がバランスを失い、機能が正常に働かず腹部症状が出現するものです。便通異常、腹痛、腹部膨満感、腹鳴、吐き気などの身体症状が現れ、慢性的に経過し症状は長期間持続します。症状の程度は軽度から重度までいろいろです。便秘、下痢あるいは両者が交互に出現したり、便の性状も兎糞状のものから水様性まで実にさまざまで、大量の粘液が混じることもあります。

 診断は、器質的な病気のないことを確認することが重要ですが、ストレスが関与している病態ですので、身体に負担となる侵襲性の検査は好ましくありません。便検査は体への侵襲がなく必須ですが、大腸検査は、検査そのもので病状が悪化することがありますので、必ずしも必要ではありません。血便が認められる人、癌のリスクが高い50歳以上の人、症状が急に出現した人、癌が心配な人などは、大腸レントゲン検査や大腸内視鏡検査が必要になります。

 治療は、精神心理療法が主体となり、腹痛や便通異常に対しては対症的に薬物治療を行います。

 当地で、消化器症状を主訴に来院される受診者の多くは、感染性胃腸炎の人ですが、最近、過敏性腸症候群の人が増えています。海外では、異なる生活環境や食生活の変化、国民性や文化の違い、言語の問題、対人関係など日本にいる時以上に大きなストレスがかかります。上記のような症状が少しでもある人は、気のせいと一人で悩まず気軽に相談室を訪れてください。話をするだけで症状が軽快することもあります。また、この病気は機能異常による疾患で、すぐに良くなることはあまり期待できません。その点を十分理解して、あせらず、気長に病気とうまく付き合っていくという心構えが最も大切と思われます。
 なお、確定診断のための大腸内視鏡検査は当医療相談室で実施できます。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
横矢 佳明

◇健康保険制度について
 海外に住んでみて初めて感じることですが、最近とかく言われている日本の健康保険制度・医療制度ですが、様々な欠点はあるものの全体としてはうまく作られているのではないかと感じます。今月のニュースレターは中国の健康保険制度を取り上げてみたいと思います。但し、これは私が医療相談室の職に就いているため興味を持ち自分で見聞したものをわかりやすく書いたものであり、制度全体を正確に伝えるものではありません。

 中国の健康保険(医療保険)ですが、歳入に関しては企業負担と個人負担に分けられその負担割合は日本の様に一定ではありません。これは保険の実施主体に国が関係する日本とは違い地方自治体レベルで実施されているためと思われます。しかし、概ね賃金総額の6%を企業側が負担し2%を個人側が負担することが多いようです。このうち個人負担部分のすべてと企業負担の一部が個人に帰属し、残りの企業負担部分との2部構成となっています。個人に帰属する部分に関しては外来診療に当てられ、残りの部分に関しては入院診療に当てられることとなっています。

 次に歳出に関してですが、外来に関しては給料の一定割合までは全て保険(個人に帰属する部分)が負担することとなっており、その一定額を越える部分に関してはすべて自己負担となっているようです。この個人負担が大きい場合でも基本的には保険より補填されることはあまりないようです。入院に関しては一定額は自己負担となっており、それ以上の部分に関しては人により一定割合の負担をせねばならないようです。

 以上の状況はあくまでも自分の見聞によるものですが、原則的には上記のような状況と考えていいようです。但し、日本とは違い国民皆保険とは違うために、当地で入院された方のお話しでは実際にはほぼ全額自己負担にならざるを得ない方もいらっしゃるようです。

 日本との比較となりますが、日本の場合は収入に反比例する形で自己負担額が決まっていますが(つまり収入が多いほど自己負担額が大きい。)、中国の場合は逆のことが多いようです。また、上記の通り国民皆保険制度が確立されていないため人により医療を充分に受けられない可能性があります。日本の医療制度もかなり疲弊してきていますが、誰でもいつでも一定の医療を受けることができるという点ではよくできた制度だとは思います。但し、そこに甘んじることなく一人一人がコスト意識を持ち不必要な受診を控えるという努力がなければ日本の医療制度は崩壊しかねない状況ですから、中国の医療制度の一部を取り入れていくことも必要かとも思います。

 以上はそろそろ慣れてきた診療業務の合間にふと感じたことを書いてみました。

追伸:邦人医療基金の他の診療所とは違い唯一の寒冷地域にある大連は9月にもなると朝晩は非常に冷えてきております。当地に赴任・出張される方は充分に御注意ください。