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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL02080101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール


シンガポール日本人会診療所
大西 洋一

◇シンガポールのデング熱対策

 先頃、シンガポールの環境省からデング熱の現状についての報告がありました。

 シンガポールではアジアの他の地域に比べていわゆる熱帯病は極端に少ないですが、それでもデング熱は1カ月あたり100-150人の報告があります。

 1960年代より政府は対策に乗り出し1969年には市民教育と関係法令の整備が行われました。原因ウイルスを媒介する蚊の駆除に取り組み、(シンガポールではボウフラの発生原因となる水たまりを作ってはいけません。抜きうち家屋検査があり、鉢植えなどに水たまりがあったりしても罰せられます。)その甲斐あって1970年以前には25%の家屋にみられたこれらの蚊が現在では1-2%となっています。その結果、デングウイルスに対する集団の免疫獲得率(感染頻度の指標になる)も年々低下してきています。

 ところがその一方で集団の免疫性の低下によって、より簡単に、またより激しい流行をみる傾向にある事が問題となっています。(昨年の患者数は人口10万人あたり47人の計2,372人でうち0.3%の6名がデング出血熱となり、死亡例は4名。)蚊の駆除対策が一定の成果をみたものの、結果的に蚊が広い地域に分散し、人間があまり足を踏み入れないような地域にまで散ってしまい、この先蚊の駆除が困難になってきたという問題もあります。

 市民に対するデング熱や媒介する蚊についての教育はある程度成功したものの、それを実践する人の数は少なく、市民の無関心のため、結局は蚊をコントロールするのは環境省が主体とならざるを得ません。

 以上のようなことから、政府はさらなる対策強化を打ち出しています。まずは関係省庁による媒介生物コントロールネットワークの構築です。蚊とデング熱の発生についての調査データの迅速かつ効率的な収集と活用を目的としています。医療機関に関しては患者をみた場合、24時間以内にファックスか可能ならE‐メールで報告するよう求めています。そしてこれらを統括してデング熱対策の陣頭指揮にあたる環境健康機関が設立されました。IT先進国のシンガポールらしいやり方で、デング熱対策への強い姿勢がうかがえます。

 しかしながら、最も重要なのは市民が関心を持って積極的に協力する事であり、それなくして成功はあり得ません。環境省はこれからも市民の啓蒙活動には力を入れていくと宣言しています。


◆マニラ


マニラ日本人会診療所
雨森 明

◇BCG再接種

 厚生労働省は今年3月、結核予防法に基づいて小中学校で実施されているBCG(結核予防接種)の「再接種」を廃止する方針を固めました。また16歳以上のほぼ全国民に義務づけている、エックス線撮影による年1回の結核検診を、40歳までは就職や転勤などの際だけに実施する「節目検診」に変更する方針です。BCG再接種によるワクチンとしての効果は有効性の根拠がなく、世界保健機関(WHO)も廃止を勧告していること、年1回の検診による患者発見の効率が悪過ぎること、また、すでに再接種をしていない外国では再接種廃止による患者の増加が見られなかったなどの理由です。しかも、再接種によって結核の診断が難しくなります。再接種の影響でツベルクリン反応の偽陽性者が増え、本物の結核による陽性との区別がつけにくくなるからです。今の結核対策は51年制定の結核予防法に基づくもので、半世紀ぶりの政策転換となります。ただ、BCG廃止の方針を固めただけで実際の時期についてはまだ決まっていません。おかしな話ですが、現在はツ反のみ義務で、その結果によるBCGは任意になっています。なお、乳児に対するBCGの有効性はある程度認められているので、初回接種は従来通り行われます。

 日本人学校でも小学校の一年生と中学校の一年生にツベルクリン反応(以下ツ反)を行ってきました。ツ反が陰性なのでフィリピンでBCG再接種を受けるべきか日本で受けるべきか、子供を持つ日本人の親から相談をよく受けます。再接種は日本以外ではほとんど行われていないし、日本以外の国ではBCGそのもののやりかたが違い、その後のツ反の程度がかわってしまいます。日本でもBCG再接種は任意だし、近く再接種が廃止になるという情報も入っていたので、その必要性について説明に困ってしまうこともあります。フィリピン人ドクターからもなぜBCG再接種をするのだと聞かれて説明に苦労します。

 BCG再接種が続けられてきてしまった理由に、50年前は日本でも結核が大問題で、予防について今と考え方が全く違うということがあります。コストがかかっても無差別に検査してできる予防は何でもしていこうという時代から、患者が減って効率的な検査と治療の充実につとめるべきだと考え方がかわったのです。


◆ジャカルタ


ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
横内 敬二

◇かぜ症候群

 いわゆる「かぜ」、かぜ症候群は鼻や咽喉等の粘膜がおかされる上気道炎の総称です。

 内科一般診療の中では最も多い疾患で、ほとんどはウイルスによる感染症です。かぜの原因となるウイルスには、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ライノ、コロナ、エコー、アデノ、RSウイルス等多数のウイルスがあげられます。疲労、寝不足、飲酒、脱水、体の冷え等が誘因となり、体力が低下している時に発症します。インフルエンザ以外のウイルスによる症状は一般的に軽く、全身倦怠感、咽喉痛、咳嗽、鼻炎症状、頭痛、38℃前後の発熱等で、安静と十分な栄養補給により2~3日で軽快します。ただ、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者、妊婦、糖尿病や喘息などの慢性疾患を持っている人は、時に重症化しますので十分な経過観察が必要です。熱が何日も続いたり、痰が膿性になった場合にはかぜ以外の疾患が考えられますので、必ず医療機関で診察を受けてください。

 日本では主に乾燥した寒い冬に流行しますが、四季の無い熱帯地方では一年中みられます。医療相談室の受診者の約3割はかぜの患者さんです。インフルエンザも大流行はありませんが、散発的に発生しています。休養せずに無理をして、急性扁桃炎や急性気管支炎にかかる人もしばしば認められます。ジャカルタは大気汚染がひどく、また室内外の温度差、湿度差が著しいため、気道の過敏性がいつまでも残り、咳が長期間続く傾向もあります。

 予防は、手洗い、うがいを励行し、十分な休養と睡眠、バランスの良い食事に心掛け、普段から免疫力を高めておくことが重要です。


◆大連


大連市中心医院日本人医療相談室
横矢 佳明

◇A型肝炎

 日本でも夏真っ盛りとは思いますが、当地も予想以上の暑さです。さまざまなガイドブックをひもといてみるに「大連は日本とは違い蒸し暑くない」と書かれてはいますが生活してみると日本と変わらない感じがします。とは言っても日本よりはましだとは思いますが。

 7月の相談室業務に関してですが、夏場なので食中毒が増加してくるかと身構えておりましたが、それほど多くは発生せず、かつ、夏休みに入り日本に帰国される方が多くなり何とか無事に乗り切ることができほっとしている状況です。ただ、その代わりといっては変ですが一部の地域に限って季節外れのA型肝炎が流行しました。季節外れであること、一部の地域でしか発生していないこと、感染者に共通点(一部の店へ頻繁に通っていた。)が認められることなどから原因は推定できますが、流行時期でないからといって安心できない状態というのが今回の流行で十分に理解できました。このA型肝炎の予防に関しては途上国への派遣が多い企業の総務担当の方なら御存知だとは思いますがワクチンが有効です。一般にはワクチンは一回目を接種した後、一週間後・半年後に接種するわけですが、派遣先を半年前に決める企業はほとんどないことから2度目までは接種するが3度目は接種していない方が結構な割合でいらっしゃいます。今回の流行をきっかけにA型肝炎の免疫獲得がなされているかどうかを調べてほしいという相談がまとまった数でありました。そのうちの2名の方々が2度目の接種まで行っていたにもかかわらず接種後1年から1年半後にはすでに抗体がない状態(免疫獲得がなされていない状態)でした。このようなケースもありうるのでレジュメどおりの接種を行うこと、もし行っていなかった場合はひとまずは抗体の確認を行っていただけたらと思います。大連への赴任のみに関していえば基本的にはA型肝炎以外の当地特有の伝染病(日本では発生せずに当地で発生しうるという伝染病)は4月赴任より現在までの4カ月間には発生しておりません。一方A型肝炎に関しては大連常駐者1,700人と言われておりますが今年だけでも100人以上の方々が罹患しております。ワクチン接種を行っている方々には伝染しないことを考えるとワクチン接種を行っていない方だけなら相当な割合の発生率といえるでしょう。当地でのA型肝炎の位置づけと日本のものとは違うことから強制入院となり外出もままならないことから日本に帰国後入院される方がほとんどで、再赴任まではほぼ一カ月間前後かかります。ご本人の健康という点からも業務上の観点からも大連赴任時には最低でもA型肝炎のワクチンだけは接種後赴任されることをお勧めいたします。

 ともあれ当地は海産物が非常に豊富で新鮮なものもたくさんあり、ワクチン接種をされて当地赴任後に食べ物を存分に味わってください。当地では娯楽も日本ほどはないために食べ歩き自体が大きな娯楽の一つであり、かつ、息抜きでもありますから。