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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL02040101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所 
大西 洋一 

◇シンガポールでの手足口病

 シンガポールの保健省から、最近、手足口病の流行が見られるという連絡がありました。以前にマレーシアで手足口病の流行中に、急性脳炎により急死した小児例があることからシンガポールでは手足口病はかなり敏感に扱われています。

 手足口病は、経口、飛沫、接触で人から人に感染する、主に幼児に流行するウイルス疾患です。主な病因ウイルスは、エンテロウイルス71ですが、原因となるウイルスは一つではなく、その他のエンテロウイルスによっても同様の症状を呈することがあります。いったん罹患すると感染を受けたウイルスに対する免疫は成立しますが、異なった血清型のウイルス感染を受けて再び同様の症状を現すことはあり、この場合手足口病を反復して発症しているかのようにみえます。

 手足口病は、口腔粘膜および四肢末端に現われる水疱性の発疹を主症状とし、発熱や上気道の症状を伴うこともあります。大部分は発疹のみの軽い疾患であり、特別な治療は必要としません。まれではありますが髄膜炎や心筋炎の合併が見られます。日本でも手足口病の経過中に死亡あるいは重篤な神経症状を合併した症例が複数の医療機関で経験されています。

 今回の保健省からの通達では、患者発生の際には通学中の学校の名前も含めて直ちに報告するよう求められています。そして患者は発症から少なくとも7日間は出席停止にするようにとのことです。患者がでた場合、学校の消毒を行うとの話もあります。

 しかしながら基本的にはポピュラーな軽症の疾患であって、目下のところこれらの重症合併症の発生は稀なことであり、医学的には、手足口病になったすべての患者に厳重な警戒を呼びかける必要はないと思われます。

 日本でも、学校保健法では学校伝染病第3類の「その他」として扱われており、出席停止期間等についての明確な規定はありません。主な症状が消失した後も3 4週間は糞便中にウイルスが排泄されるので、回復した患者も、長期にわたって感染源となり得ます。また、感染しても発症しない患者は、気づかないままウイルスを排泄し続けます。したがって急性期のみの登校登園停止による学校・幼稚園・保育園などでの流行阻止効果はほとんど期待ができません。大部分は軽症疾患であり、合併症ことに髄膜炎・脳炎などについて注意がおよんでいれば問題は少ないため、発疹だけの患児に長期の欠席を強いる必要はなく、また現実的ではありません。登校登園については、流行阻止の目的というよりも患者本人の状態によって判断すべきでしょう。

 以上のことから、医学的に見ると、シンガポールのやり方はいささかやりすぎの気がしますが、社会問題に対する行政の毅然とした態度とその対応の早さにはいつも感心させられます。日本でBSE(牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病)が問題になったときも、シンガポールではあっという間に日本の牛肉は輸入中止になり、レトルトカレーなど牛肉入り加工食品もあっという間にスーパーの棚から消えました。薬害エイズ、BSE問題など、対応がいつも後手に回っているどこかの政府とは大違いです。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所 
雨森 明 

◇夏と下痢、脱水

 三月も終わりになってマニラは急速に暑くなってきました。10月頃から年末、二月にかけて昼は涼しくて過ごしやすく、夜は寒いほどでした。この時期には、脱水で点滴を必要とするような患者はほとんど発生していませんでした。昨年は私が当地に赴任した三月には脱水患者が多く、四月はほぼ連日、点滴を誰かに行っていました。

 日本人はトイレの心配もあって、特に女性は飲水を控える傾向にありますが、暑い時期にはこれが脱水になりやすい状態を作っているのだと思います。現地の人間はどこかに出かける前にはコップ一杯の水を飲むことがほぼ習慣付いていて、他人の家を訪問した際でもその家の主人に水をお願いすることは少しも恥ずかしいことではないらしいのです。日本では、他人にお茶を所望することは何となく厚かましいようではばかられるのですが。多くのフィリピン人はこの習慣を特に意識していませんが、やはり生活の知恵なのでしょう。また、インテリでも女性でも、トイレを使うことや小水の水音を全く気にしていません。飲水に関することにマナー上のタブーは少ないのではないかと私は考えています。

 当地では日本人はそう簡単に腸チフスなどになることはなく、なってもたまたま少数の菌が体内に侵入するだけなので、感染症の病態そのものは軽度です。アメーバ赤痢でも同じ事が言えます。問題は、下痢によって脱水状態が進行し、腸炎よりも脱水による症状です。だから、点滴をして水分を補給するだけで症状が著明に改善することが少なくありません。特殊な腸炎をのぞき、下痢に対する治療は抗生物質の投与ではなく、脱水の改善にあります。当地で生活する邦人は普段からたくさん水を飲むことを心がけてください。


◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室 
横内 敬二 

◇洪水とレプトスピラ症

 ジャカルタ都市部での洪水被害は減少してきていますが、一部地域にネズミが大量発生して新たな伝染病の流行が懸念されています。ネズミの尿で汚染された水から感染するレプトスピラ症が発生しました。

 今までに9人の死亡者が出ており、ジャカルタ特別州知事はネズミ駆除を市民に呼びかけました。(ジャカルタ新聞)

 レプトスピラ症は、病原性レプトスピラによる人畜共通感染症です。病原体は、主に感染したネズミの尿から排泄され、汚染された水田や河川、土壌を介して、人には結膜、鼻咽頭粘膜や口腔粘膜から経皮的に感染します。

 洪水が起こると土壌の中に潜んでいた菌が表面に現れ、また、ネズミの大量発生とともに感染の危険性は高まります。

 以前に日本でも田園地帯や山間部で大流行したことがあり、地方病として、秋やみ病などと言われていました。最近は、保健衛生の向上で散発的に発生しているだけのようです。症状は、3~14日の潜伏期の後、高熱、結膜充血、筋肉痛などが認められます。

 大部分は軽症のまま経過しますが、発病後4~5日目に黄疸、出血傾向、腎障害にいたる重症型のワイル病になる例がありますので注意が必要です。

 治療は、早期の抗生物質投与が有効です。ペニシリン、アミノグリコシド、テトラサイクリンなどの薬が使用されます。重症例では静脈注射が行われます。

 予防は、汚染された水に出来るだけ接触しないことですが、職業柄どうしても感染機会の多い農業従事者、食品加工関係者、汚染地帯で水泳などのスポーツを行う人にはワクチン接種が推奨されます。