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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL01090101
医療情報 /シンガポール /フィリピン /中国

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
大西 洋一

◇シンガポールにおけるデング熱の状況
 今回は、前回に引き続き、蚊によって媒介される感染症についてお伝えします。7月末にシンガポール保健省からデング熱について通達がありました。それによると、5月からの2カ月の間に、発生例の報告が急増したとのことです。7月末時点でその報告数は1087例に及び、前年の同時期に316例だったのに対し大幅に増加したとのことです。ただし、死亡例は無しとのことでした。
 
 政府は、原因ウイルスの媒介生物である蚊の駆除とデング熱に対する啓蒙活動を強化しています。医者に対しても、高熱を訴える患者を診たら、デング熱も疑うようにと注意を喚起しています。

 デング熱はデング熱ウイルスによる感染症で、シンガポールではAedes蚊と呼ばれる蚊によって媒介されます。蚊に刺されてから4-6日の潜伏期の後、突然の高熱で発症します。熱は4日ほど続きます。頭痛、関節痛、筋肉痛を伴います。ウイルスによる感染症なので、治療は対症療法しかありません。肝障害がよく見られますが、多くの場合はそのまま自然に治癒します。ただし4%ほどの感染者は血小板が減少して出血しやすくなったり(デング出血熱)、血圧が低下してショックを起こしたりするといわれています。そうなった場合、適切な管理を行わないと命にかかわることもあります。

 シンガポールでのデング熱(出血熱)での死亡例はこの数年を見てみると年間1-3人程度です。それらの人々はお年寄りだったり、手当の遅れた労働者でした。すぐ隣のマレーシア・ジョホール地区では、シンガポールより遙かに多い10人以上の死亡者がでています。おそらくは発症後の手当が遅れたり、全身管理が十分でなかったりしたためだと思われます。

 デング熱に関して重要なことは、まず、蚊を発生させないこと、次に蚊に刺されないようにすることです。そして万が一かかってしまったときは、出血熱、ショックといった重症化を見逃さないようしっかり経過をみてくれて、重症化の際には十分な治療を行ってくれる医療機関を受診することです。


◆マニラ

マニラ日本人会診療所
雨森  明

◇デング熱流行:今年はデング熱の当たり年で、すでにフィリピン全土で一万人の患者が報告されている。フィリピンの各医療機関からは報告されていない症例も数多くあると思われ、実際数ははるかに多いと考えられる。

 当診療所でも七月以降二ヶ月間で約15人ほどの邦人患者の発生を見た。雨期も本格化しこれからさらに感染者数が増える印象がある。

 デング熱は熱帯や亜熱帯地域に発生する発熱性疾患で、主にネッタイシマカによって媒介されるウイルス病である。基本的には後遺症を残さず軽快する良性疾患であるが、高熱を来たすことが多く、治癒後も全身倦怠感が数日から二週間ほど残る。白血球や血小板(血液凝固に関与する血中細胞質)が減少し、小児や老人は高熱や出血傾向のため死亡することもある。また、デング熱の劇症型であるデング出血熱は、発生はまれではあるが主に小児が罹患し死亡率は10~15%と非常に高い。

 現在のところ、クリニックに来院しデング熱と診断された邦人の場合、小児を含め症状はほとんどが急な高熱と全身倦怠感のみで、白血球や血小板は減少するものの重篤な症状に至った症例はない。当クリニックからは入院となった例もほとんどないが、一般病院を受診した邦人は入院となることも多い。フィリピン人は胃十二指腸潰瘍罹患率が高いのか、消化管出血をおそれての入院であり、症状がなくとも血小板数が1ミリメートル立方あたり10万個以下になると入院させるようである。白血球減少からさらなる重複感染症の罹患を防止する目的もあるのであろう。実は日本人の生活環境は悪くはないのだが、一般的なフィリピン人の生活は衛生的と言い難い部分があり、よってかかる処置となると思われる。

 治療薬はなく、予防は蚊に刺されないことにつきるが実際にはそれも難しい。潜伏期は数日から一週間ほどあり、なかには日本に一時帰国した際に発症した人もいた。日本で普通に処方される解熱剤は血小板の機能を落とし、結果出血傾向を助長するサリチル酸系解熱剤が含まれているものが多いため(バファリン等)、今の時期フィリピンに足を踏み入れた後で一週間以内に高熱を来した人は、帰国した際でも解熱剤は、抗血小板作用がまれなアセトアミノフェン(=パラセタモール)(フィリピンでは通常、解熱剤といえばこれを指す。もちろん日本でも入手可能)を使っていただきたい。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
渡邊 浩司

◇中心医院の心臓内科:大連市中心医院の循環器内科は50ベッドで、CCU6ベッドを併せ持っています。

 看護婦は2交代制で日勤は6~8名、夜勤帯は2名となり、点滴業務の多い病棟作業をこなすのは大変です。こちらの習慣で、身の回りの世話は家族の仕事。CCUのみ完全看護となっています。大連でも生活習慣病が問題になっています。ある日の入院病名を例示すると、高血圧10名、心筋梗塞8名、狭心症10名、心不全7名、リウマチ性心疾患4名、心筋症1名、僧帽弁狭窄症1名、不整脈2名、原因不明の胸部苦悶5名と冠動脈疾患が4割近くを占めていました。

 心筋梗塞の内科的治療などを見ていると、アメリカの治療方式に従った薬剤の選択や治療判断が行われているように思われます。心臓カテーテルはここ数年盛んになっており約200件/年、うち風船による血管拡張術約80件/年、ステント留置約100件/年となっており、これらが緊急に行なわれる割合は30%ということでした。日本に比べればまだまだですが、費用が高く、保険制度が日本のように手厚くないためでしょう。「何とかしてあげたい患者さんには自分の手持ちのステントを無償で提供することもある。」と言う医師もいます。ステントで救われても、その後のフォローアップには来られないということもしばしばなようです。日本の社会保険システムのありがたさを痛感させられる話です。

 今後、経済レベルの上昇や保険制度の充実に伴って、こうした先進医療もますます普及していくことでしょう。中心医院の他には大連医科大学附属第一医院、大連第二人民医院なども心臓カテーテルが盛んに行われる病院です。

 以上、垣間見た大連の循環器治療状況です。とっさの場合には大病院に飛び込めば何とかなるというレベルには達していると思います。