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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL01070101
医療事情 /シンガポール /フィリピン /中国

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
大西 洋一

◇ニコチンガム:今年3月に、英国政府はニコチンガムのスーパーや小売店での販売を始めました。これは喫煙者の70パーセントが喫煙をしたいと希望しており、ニコチン代用品(ガム、パッチ、トローチなど)を使用することによる禁煙の成功率がほかの方法より2倍の高さであることから、この措置に踏み切ったと言われています。日本でも、使用の際には医師の処方箋が必要ですが、ニコチンガムやパッチが調剤薬局で販売されています。シンガポールでは1992年にすべてのガムの販売が禁止になり、現在に至るまでニコチンガムは販売されていません。ガムが禁制品となった際に、厚生省はニコチンガムの例外措置を検討しましたが、当時、禁煙プログラムにはまだニコチンガムが重要であるとの認識がなかったため不許可となったという経緯があります。今回、世界禁煙デーの5月31日に保健科学庁が、禁煙用ニコチンガムの販売禁止の見直しを行うと発表しました。ただし、見直しは治療性の高い物質が含有されているチューインガムのみに厳しく制限すると強調しています。今回の措置は、ニコチンガムの製造元である製薬会社が政府にガムの発売禁止措置の再考と販売許可の誓願を求めたことに答えたものです。「医学的な見地から」という製薬会社からの誓願ですが、マーケットを広げたいという製薬会社の思惑もあるようです。いずれにしても禁煙の方向に話が進むのはいいことです。シンガポールでは喫煙場所は厳しく制限されており、違反した際の罰金もかなり高額で、また、たばこ自体も非常に高い税金が課せられています。つまり喫煙者にはかなり厳しい環境です。ここで喫煙する人はかなりの筋金入りの喫煙者で、そう容易くは禁煙しないでしょう。そういった人たちが禁煙に取り組み、果たして製薬会社の思惑道理になるものか今後の動向が気になります。


◆マニラ

マニラ日本人会診療所
雨森  明

◇感染性腸炎:マニラも雨期となり、涼しくも湿度の高い日々が続いております。
 雨期に入って急に感染性腸炎の患者が増えてきました。当診療所を訪れる人は多くがどこで感染したかわからないと言っていますが、経口感染であることは間違いないので飲食に留意すれば理論的には予防可能です。
 以下に日常生活上問題となる下痢症をあげました。

アメーバ感染症
 アメーバー性腸炎は、便の検査ですぐに診断が可能です。診断できればMetronidazoleなどで駆虫でき症状も2日ほどで改善することがほとんどです。Metronidazoleは吐き気や下痢の副作用が強くでることがあり服用期間も一週間以上と長いので、実際は当診療所ではTinidazoleやSecnidazole等日本では入手不可能な他の駆虫薬を三日間使っています。
 症状は人によりけりですが、何の治療もせずに治ってしまう人から、軟便が少し続く程度の人、嘔吐と水様下痢を伴い点滴を必要とする人までいます。6月の時点で当診療所に来院する急性胃腸炎の10%ほどがこれによるものでした。粘血便が認められたり、残便感が強いにもかかわらず少しずつしか排便がないというのが典型的な症状です。

細菌性下痢症
 日本では一般に抗菌薬の投与は、便回数が1日10回以上、水様便かつ膿または血便、体温38℃以上、重度の腹痛、嘔吐5回以上の内、下痢症状を含む最低二項目以上が該当する症例を対象とし、症状緩和と周囲への二次感染防止のために発症初期に使用するのが原則で、解熱あるいは腹部症状が改善した時点で投与中止となります。フィリピンでは雨期になって診療所を訪れる感染性胃腸炎の患者が多く、原則よりはかなり早めの検査と抗菌薬投与となっています。

サルモネラ腸炎
 サルモネラ菌は多くの型に分けられる菌種でそれだけに実際には様々な症状を呈するのですが、そのうち腸炎がもっとも目立つ症状です。自然治癒傾向の強い疾患であり、抗生物質によっては治療後の再排菌を来す例があり、逆に罹病期間が長くなる場合さえあります。症状が軽ければ、教科書的には抗生剤の適応とならない病気です。血や便を採ってサルモネラ感染症かどうか結果がわかるまで治療を待っているわけでもないので、症状にあわせて感染性下痢症としての治療を行っています。ただ、排菌が続いていても症状さえなければ一週間ほどで抗生剤の投与は中止します。
 すべての下痢症にサルモネラの同定検査をしているわけでもないので、来院する感染性下痢症患者の中にサルモネラ症の人もかなりいるのでしょうが、割合がどのくらいかはわかりません。

腸チフス
 これらを起こす菌もサルモネラ菌の一種ですが、他のサルモネラ感染症とは臨床症状が違います。病初期は熱や悪寒、頭痛で始まり、典型例では最初の一週間で徐々に衰弱してきます。1/3の症例では水様下痢を伴い長く続きます。典型例では約四週間の経過をたどり治りますが、抗生物質がなかった昔は腸が破れたり重篤な状態に陥ることもあって死亡率は10%を越えていたそうです。
 治療ですが、昔はクロラムフェニコールという抗生物質しかなかったのですが、現在は耐性菌が増えたこととほかによい抗生剤ができてきたこと、クロラムフェニコールで治療すれば10~20%という高率で再発する人がでることなどのためクロラムフェニコールは使われなくなってきています。
 6月のマニラ日本人診療所では全外来患者の1%以下に血清検査で腸チフスと診断する(本来は細菌培養検査で診断するのですが、外来では手技上の問題で行いにくいため主に抗体検査と古典的検査の二種を実施しています)患者が発生しています。現在のところ、日本人では重篤な症状に陥った人はなく、軽い腹痛と微熱および強い倦怠感ですんでいることがほとんどです。あるいは確定検査(培養検査)を行っていないために擬陽性の患者が含まれているのかもしれません。治療は、症状消失後排菌のないことが確認されなければなりませんが、実際には多くの医療施設でも排菌の有無までは確認していないようです。
 3年間は予防に有効な注射があるので、学童以上の年齢に達している人で移動立ち食い出店などをよく利用する人は注射を受けた方がよいでしょう。(幼児にはまれなため必要ない)ワクチンは当クリニックにあります。

その他
 A型肝炎の初期でもまるで感染性下痢症のような症状を呈することがあります。やはりこれも水系感染なので飲用水には十分気をつけて、必ず赴任前あるいは赴任後に当クリニックでワクチン接種をしてもらってください。

附記
 すべての下痢症に共通する症状として脱水があります。飲水をしなければ下痢をしないと思っている人もいますがとんでもありません。下痢の程度は尿と違い脱水状態に関係ありません。脱水状態では口渇感を覚えないので、暑い国で下痢になれば症状の軽い内から口渇なくとも積極的にスポーツ飲料等の飲水に努め、なるたけ体調をよく保てるようにしてください。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
渡邊 浩司

◇過労に追い込まれる観光都市の駐在員
 大連市は戦後世代にも魅力のある観光都市を目指しており、春のアカシア祭り・秋のファッション祭りといったイベントに加え、この2年間でも金石灘国家レジャー区の施設充実、新日本人街・ロシア人街の建設、浜海路沿いのドライブウェイ整備と東海公園の建設などのハード対策を進めた結果、内外の観光旅行者数増加という成果を生んでいる。歴史的関係、距離的な近さに加え、観光の魅力が大きくなってきたのが最近の大連だ。
 こうした傾向は、大連駐在員の健康管理にも影を落とす。長い冬が明けると各社への訪問者が増え始め、夏はそのピークを迎える。案内・接待に追われる担当者は大変だ。毎晩のように続く宴会では中華料理とアルコールで胃腸を弱らせ、深夜の帰宅が続いて体力は落ち込む。土日も休みなくゴルフと観光案内に出かけ、体力を回復する間はなく、家族からも見放されてしまう。もちろん昼間はいつもの通りストレスフルな中国ビジネスにエネルギーを注ぎ込む生活だ。
 「カゼが長引く」、「異常な疲れが続いている」、「下痢が1カ月止まらない」etc…。過労に基づく体調不良を訴える来院者がこの時期増えてきた。6月には心筋梗塞の入院が2名続き、いずれも通常以上の業務が行われた時期に責任ある立場にいた方々である。幸い経過は順調であったが、仕事と休養のバランスが取れていれば防げたのではないかと思われるケースだ。
 本来の業務に加えて取引の上で欠かせない接待は「見えない仕事」である。それが日常化せざるを得ない場合、生活のリズムを崩し、休養の機会を奪うという点で社員の健康に与える影響は大きい。こうした実情を看過せず、本社労務・健康管理部門では適切な対策を講じられることを願いたい。

◇農村部の衛生環境
 モノと光にあふれた都市生活とはかけ離れた生活が農村部では未だに続いている。水道はなく、「川で洗濯」が日常の風景であり、衛生環境は目を覆わんばかりだ。均一化された日本の社会とは大きく異なった状況だ。都市と農村との収入差は10倍以上と思われる。
 大連から高速道路を経て2時間余りの瓦房店市閻店郷でこの9月、国家公務員共済組合連合会の派遣医師チームがボランティア健診活動を行う計画が進められている。粗末な診療施設と少ない医療スタッフ、わずかな治療費さえも払いきれない低い経済力、基本的な衛生を保つための生活基盤が未整備と、病気に罹りやすく治すことが困難な生活が農村部には厳としてあり、都市から離れるにつれてその状況は深刻さを増す。こうした農村医療の状況改善に一役をという活動だ。
 診療費を払うことができないために気になる健康問題を放置していた人たちが、こうした無料健診にはこの時とばかりに訪れる。こうした中から地域の健康問題を探り出し、地域の医療施設へと導き、地域医療・保健の担当者達とディスカッションをすることが予定されている。現地医療環境の自立発展はもとより、中日の絆を深めることにもこうした医療協力が役立つことを期待したい。